〜 感覚過敏の子どもが感じている世界 〜
【全6回シリーズ・子どもとの関わり方】第3期 第4回
指導の現場に立つと、発達特性のある子どもたちと関わる機会も数多くあります。
- 活動中、突然耳をふさぐ子
- 体育館に入った途端、落ち着かなくなる子
- みんなと同じ場所にいるのに、どこかつらそうな表情を見せる子
以前の私は、
- 「大きな音が苦手なのかな…?」
- 「今日は気分が乗らないのかな…?」
と考えていました。
しかし、子どもたちと向き合い続ける中で確信したことがあります。
それは、
👉 結論:私たちと子どもたちとでは、同じ世界を見ているようで、
実は違う世界を感じていることがある。
ということです。
- 私たちには普通に聞こえる笛の音
- 気にならない蛍光灯の光
- 何とも思わない服のタグや人との距離感
👉 それらが、ある子どもにとっては
強い不快感や苦しさ (つらさ) になっていることがある。
周囲からは、
- 「気にしすぎ…」
- 「そのくらい我慢できるでしょう…」
と思われているかもしれません。
👉 でも本人にとっては、決して大げさではないんです。本当につらいんです。
また反対に、
- 体を揺らしたり
- 何度もジャンプしたり
- 触りたがったり
する、子どももいます。
👉 一見すると落ち着きがないように見えるその行動も、
実は身体や感覚を整えるために、必要な行動であるときがあります。
今回は、
- 感覚過敏とは?
- 感覚探求とは?
- 体育館や集団活動で何が起きているのか?
- 私たちにできる理解と関わり方
これらについて、現場での経験も交えながらお話しします。
もし、
- 「どうしてうちの子は耳をふさぐんだろう…?」
- 「なぜ集団活動が苦手なんだろう…?」

そんなふうに感じたことがある方は、ぜひ最後まで読んでください。
👉 子どもたちが感じている世界の見え方が、きっと大きく変わると思います。
▶︎ 今回の記事はシリーズの一部です。全体の考え方をまとめて読みたい方はこちら👇
▶︎ 人は、何歳になっても学び直せます。
私は30年以上現場で指導していますが、子どもに対する見方を間違えていた時期がありました。
もしかして、こんなことはありませんか?
保護者が驚く『感覚過敏あるある』チェックリスト
あなたのお子さんに、こんな様子は見られませんか?
□ 体育館や運動会で耳をふさいだり、その場から離れたがったりする
□ 洋服のタグや靴下の縫い目を嫌がることがある
□ 掃除機やドライヤー、チャイムなどの音をとても嫌がる
□ 人混みやにぎやかな場所に行くと疲れやすい
□ “わがまま” や “気分の問題” と思っていた行動に理由がある気がする
いかがでしたか?
もちろん、ひとつでも当てはまったからといって『感覚過敏』とは限りません。
しかし、子どもによっては音・光・触覚などの刺激を私たち以上に強く感じていることがあります。
大切なのは…、

「なぜそんな行動をするんだろう?」と考えてみることなんです。
実は私も、現場で初めて知りました
👉 子どもが見せる困った行動の裏側には、
実は “見えないつらさ” が隠れていることがあります。

耳をふさいでいるのは、「話を聞きたくないから…」ではなかったんです。
感覚の感じ方は、人によって違う
👉 結論:みんな同じように感じているわけではない、という視点を持つこと。
⚫︎ 例えば…、まぶしさの基準が違う
大人にとっては少し明るい晴れの日でも、ある子どもにとっては、
👉 車のヘッドライトを至近距離で浴びているようなまぶしさに感じられて、
目を開けていられないことがあります。
⚫︎ 例えば…、音の聞こえ方が違う

「先生の話を聞きなさい!」
あなたも子どもの頃に、一度は言われたことがある言葉ではないでしょうか?
でも、もし教室の中で、
- 先生の声
- 友達の鉛筆の音
- エアコンの音
- 廊下の足音
- 窓の外の車の音
これらが全部、同じ大きさで聞こえていたとしたらどうでしょう?

私だったら、きっと先生の話どころではありません。
👉 感覚過敏のある子は、毎日そんな世界で頑張っているんです。
感覚過敏とは何?
👉 特定の刺激を人一倍強く不快に、ときには痛みとして感じてしまう状態のこと。
【 聴覚過敏 】
- 運動会のピストルの音、風船が割れる音、体育館の反響音。
👉 これらが怖くて、耳をふさいでうずくまってしまう。 - トイレの自動洗浄の音や、ドライヤーの音。
👉 これらが苦手で、公共のトイレに入れない。
【 触覚過敏 】
- 服の首元のチクチクするタグ、靴下の縫い目。
👉 これらが剣山で刺されているように痛く感じ、服を着るのを嫌がる。 - 手に泥や粘土、のりがつく。
👉 これらを極端に嫌がり、図工や砂場遊びに参加できない。
【 視覚過敏 】
- 蛍光灯の細かなチカチカ(明滅)。
👉 これらが気になって集中できない。 - 教室の壁に貼られたたくさんのポスターや予定表。
👉 これらが目に入りすぎて、脳が疲れてしまう。
感覚探求とは何?
👉 『感覚過敏』とは逆に、ある感覚に対して鈍麻だったり、
脳がもっと刺激を欲しがったりして、自ら特定の刺激を求めにいく行動のこと。
【 固有覚・前庭覚 (体の傾きや揺れ、筋肉の手応え) の探求 】
- 授業中、椅子をガタガタと大きく揺らしたり、👉 常に体をモジモジ・ソワソワと動かしている。
(脳を覚醒させるために揺れを求めている) - 友達や壁に、👉 わざと「ドスン!」と強い力でぶつかりにいく。
- 高いところから飛び降りる、ぐるぐる激しく回り続ける、👉 といったスリルを過剰に好む。
【 触覚・口唇覚の探求 】
- 服の袖や襟元、鉛筆の後ろ、タオルなどを、👉 ずっと口に入れて噛んでいる。
- ツルツルの壁、ふわふわのぬいぐるみなど、👉 特定の触り心地のものをずっと触り続けている。
【 視覚・聴覚の探求 】
- ミニカーの車輪を目の前に持ってきて、手で回しながらジーッと回り続ける 👉 様子を見つめる。
- 手を目の前でヒラヒラと動かして、光と影の 👉 動きを楽しむ。
- おもちゃから出る同じ音を、何度も何度も 👉 繰り返し鳴らして聴く。
👉 これらを知って、「私の育て方が悪かったわけじゃないんだ…」と、

自己否定から解放された保護者の方の顔を、今でも思い出します。
▶︎ 関連する内容として、こちらがおすすめです。
“わがまま” ではなく、本当につらいことがある
また別の保護者の方が、こんなことを話してくださいました。
「この子はずっと、わがままなんだと思っていました」
- 服を嫌がる
- 給食を食べない
- 運動会で耳をふさぐ
どうしてできないのか分からず、何度も叱ってしまったそうです。
「でも後になって、その行動の多くが感覚のつらさから来ていたことを知りました」
そして涙を流しながら、「もっと早く知りたかった」と話してくださいました。

私は今でも、この言葉を忘れられません。
⚫︎ 食べ物の好き嫌いではなく、砂を噛むような苦痛
給食で特定の食べ物を頑なに拒否し、口に入れられると吐き出してしまう子がいます。
ただの偏食とか甘えとか言われがちですが、本人にとっては
- 生魚の生臭さが何倍にも強調されてドブのような臭いに感じる
- 特定の食感が、口の中で砂やゴムを噛んでいるように不快
などと、
👉 生存を脅かされるほどの恐怖や、嫌悪感を覚えることがあります。
⚫︎ ずる休みではなく、バッテリー切れ (充電切れ)
学校へ行く時間になると頭痛や腹痛を訴えたり、
布団から起き上がれなくなったりする姿は、怠けに見えるかもしれません。
しかし、前述の感覚過敏などで毎日過剰なエネルギーを使い果たしている子どもは、
👉 本当に心身のエネルギーがゼロになっていて、体が動かない状態にあります。
周囲からは見えにくい困りごと
⚫︎ 身体の傷や熱とは違い、発達特性による困りごとの多くは目に見えません
そのため、

本人が限界を迎えて行動として表に出るまで、
周囲が気づけない、という難しさがあるんです。
⚫︎ 1人でいるのが好きに見えて、実は混ざり方が分からない
休み時間にいつもポツンと1人で校庭の隅にいる子がいます。
周りは、
- マイペースな子だな
- 1人が好きなんだな
と思いがちですが、本人の心の中では
- みんなの輪に入りたいけれど、なんて声をかけたらいいか分からない…
- みんなの話すスピードが速すぎて、会話のタイミングがつかめない…
などと、
👉 強い孤独感や焦りを感じていることがあります。
⚫︎ やる気がないに見えて、実は見通しが持てなくて不安
- 今からお出かけするよ
- 次の教室に移動するよ
と言われても、なかなか動かない (動けない) 子がいます。
周囲には反抗しているように見えますが、実は
- 次に何が起きるのか?
- どこへ行くのか?
の予測がつかず、恐怖で足がすくんでいる状態なんです。
👉 頭の中でスケジュールが映像化できないための困りごとです。
▶︎ 関連する内容として、こちらがおすすめです。
⚫︎ 話を聞いていないように見えて、実は頭の中の片付けが追いつかない
先生や親の指示を最後まで聞けずに別のことを始めてしまうとき、
本人はサボっているわけではありません。
- 「宿題を出して…」
- 「教科書を机に置いて…」
- 「筆箱から鉛筆を出して…」
という複数の指示 (ワーキングメモリの過負荷) を同時に処理できず、
👉 頭の中がフリーズしてしまっている状態です。
▶︎ 関連する内容として、こちらもおすすめです。
本人も理由を説明できないことがある
- 「どうしてそんなことするの?」
- 「何が嫌なの?」
と聞かれても、

子ども自身が “自分の状態” を言葉にできない、
あるいは “気づいていない” ことがあるんです。
👉 理由を言わないのではなく、答えられないんです。
▶︎ もしよければ、こちらの記事も参考にしてみてください。
⚫︎ 何が嫌なのかを言語化する語彙 (ごい) がない
例えば、服のタグがチクチクして不快なとき、
「服のこの部分の擦れがチクチクして痛いから脱ぎたい」と論理的に説明できる子どもは稀です。
自分の体に起きている不快感を言葉に変換できないため、
- 「とにかくイライラする!」
- 「この服は絶対に嫌だ!」
などと、
👉 泣き叫んだり暴れたりする (行動) ことでしか、表現できないんです。
⚫︎ みんなも自分と同じだと、思い込んでいる
👉 生まれたときからその感覚で生きているため、
周りのみんなも、同じ苦しさを我慢していると思っていることがある。
教室の音がうるさくて頭が痛くても、
「みんなこの大音量の中で耐えているんだから、自分だけ『うるさい』って言うのはおかしい」
このように思い込み、
👉 限界まで我慢した結果、突然体調を崩したり、教室を飛び出したりします。
⚫︎つらいという感覚に気づくのが遅い
- 疲れや空腹
- イライラ
- 体調の悪さ(内受容感覚)
を自覚するのが苦手な子がいます。
本人は「平気!」と思って遊んでいても、
脳や体はすでに限界を迎えており、自覚がないまま突然エネルギーが切れてしまい、
👉 激しい癇癪 (かんしゃく) や、体調不良として爆発してしまいます。
大人が持っておきたい視点
👉 だからこそ周りの大人は、行動 (怒っている、動かない) を責めるのではなく、
通訳者になってあげることが大切になります。
例えば、「なんでやらないの!」ではなく、
- 「やることが多くて分からなくなっちゃったかな? 」
- 「1つずつやろうね」

などと、声をかけてみてください。

体育館や集団活動で起こりやすいこと
体育館や集団での運動プログラムは、子どもたちにとっては本来楽しい場所であるはずです。
しかし、発達特性のある子にとっては、

その空間の特性やルールが、
まるで難易度の高い障害物競走のようになっているときがあります。
体育館は刺激が集まる場所
👉 体育館は、感覚過敏を持つ子どもにとっては五感の刺激のジャングルです。

特に音の反響と、視覚的な広さによって、
子どもの脳がパニックに陥れやすいんです。
【 音のパニック 】「ワ〜ン ワ〜ン」と響く残響音と、複数の音の同時多発
体育館は声や音が四方に反響します。
- 先生のホイッスルの音
- 他の学年の歓声
- ボールが床を叩く「ドン、ドン」という重低音
- 靴の「キュッ」という摩擦音
👉 これらがすべて壁に跳ね返り、大きな塊となって耳に飛び込んできます。
この、音が空間に充満して逃げ場がない感覚は、

聴覚過敏の子にとって耐えがたい恐怖なんです。
【 視覚の混乱 】広すぎる空間と、激しい動きの視覚刺激
仕切りがない広い空間は、どこに立てばいいかという空間認知を狂わせます。
さらに、
- 四方八方で友達が走り回る
- ボールが飛び交う
といった予測不能な動くモノが常に視覚に入り続けるため、

脳が視覚情報の処理をしきれずに、クラクラして疲弊してしまうんです。
【 においの不快 】
独特のワックスのにおいや、多くの人の汗のにおいがこもりやすく、

嗅覚過敏の子は気持ち悪くなって、入れない原因になることもあります。
待ち時間が苦手な理由
- 順番を待つ
- 1列に並んで出番を待つ
というのは、体育や運動プログラムで必ず発生する時間です。
ここを耐えられない姿は、
- お行儀が悪い
- わがまま

と叱られがちですが、理由を知れば対策が見えてきます。
▶︎ その対策には、こちらの記事を参考にしてみてください。
▶︎ 関連する内容として、こちらもおすすめです。
実際にあった現場でのエピソード
私たちが何気なく過ごしている毎日の中に、子どもたちが命がけで生きている瞬間があります。

それは “困った行動” ではなく、彼らなりの “SOSのサイン” なんです。
お父さん、お母さん、先生方へ、
👉 どうか自分を責めずに、そして子どもを責めずに、
今から、彼らが見ている世界をそっと覗いてみてください。
「早く着替えなさい!」のプレッシャーでパニックになるAさん
パジャマのまま、リビングの真ん中でボーッと突っ立っているAさん。
「早く着替えなさい!」と焦るお母さんの声が響きます。
このとき、Aさんの頭の中は、
まるで「見たこともない異国の言葉で、同時に10個のタスクを命令されている」
ような大混乱の中にあります。
- パジャマを脱ぐ
- 下着の前後を確認する
- ボタンを上から順に留める
- ズボンの裾に足を片方ずつ通す…
👉 脳の処理スピード (ワーキングメモリ) がいっぱいになり、
焦れば焦るほど頭の中が真っ白になって、本当に体が動かなくなっているんです。

サボっているのではなく、
押し寄せる情報に圧倒されて、立ち尽くしていただけなんですね。
眠りたいのに、眠れないBくん
夜10時。
布団に入ったはずなのに、
いつまでもゴロゴロ、ピョンピョンと動き回り、ときには布団を蹴り飛ばして暴れるBくん。
「いい加減にしなさい!」と言いたくなりますが、一番苦しいのは本人なんです。
昼間に学校(幼稚園)で浴びた
- 蛍光灯の眩しさ
- 友達の声
- 黒板をひっかく音
- 張り詰めた緊張感…
という刺激が、夜になっても脳の中で大音量で鳴り響き、
ブレーキが壊れた車のように止まれない状態 (過覚醒) なんです。
👉 「本当は静かに眠りたいのに、脳が覚醒しちゃって休ませてくれない!」
という、寂しさと恐怖を抱えながら、

体を必死に動かすことで、
脳の興奮を鎮めよう (感覚探求) としていただけなんです。
校門の前で足がすくむ小学1年生のCくん
ランドセルを背負い、学校の近くまでは来られたのに、校門の手前でピタッと足が止まり、
お母さんの服をぎゅっと掴んで離さないCくん。
そこから見える校庭は、感覚過敏のCくんにとって「まぶしすぎる光」と、
「何十人もの大歓声がザワザワと響く空間」という、恐ろしい場所に映っています。
「あそこに入ったら、また僕の耳と目が痛くなる…」
恐怖で足がすくんでいる我が子を前に、
お母さんも「どうして……」と、泣きたくなりますよね。
誰も悪くありません。
Cくんは、ただ自分の心と体を守るために、必死に耐えているだけなんです。

なぜならそこは、
Cくんにとって “戦場へ向かう入り口” なんですから。
Dくんはノートが破れるほどの筆圧王
いつも鉛筆の芯をバキバキ折り、
消しゴムでゴシゴシ擦りすぎてノートを破いてしまうDくん。
「乱暴に扱っちゃダメでしょ」
と注意されますが、本人はいたって真面目なんです。
👉 自分の筋肉や関節にかかっている力 (固有覚) を感じにくいため、
- これくらい強く握って
- これくらい強く押し付けないと
- 文字を書いている感覚が得られない
のです。

常に100m走を全力疾走しているような力加減で生きているため、
ノートが1ページ終わる頃には、手も心もヘトヘトになっています。
“食事の時間” が “恐怖の部屋” に変わってしまうEさん
給食の時間、トレイを前に青い顔をして固まってしまうEさん。
- 「好き嫌いはダメ…」
- 「一口でも食べなさい…」
という優しい促しも、ときには追い詰める刃になるんです。
嗅覚や視覚が過敏な子にとって、狭い教室に充満している
- カレーの強いにおい
- ご飯から立ち上る熱い湯気
- 友達の牛乳のにおい
- お皿がぶつかるカチャカチャした音
👉 これらは、それだけでめまいがするほどのパニック空間なんです。
食べられないのは “わがまま” ではなく、

その空間にいるだけで、
心がお腹いっぱいになってしまっていたからなんです。
バイバイした瞬間に、お家で爆発する5歳のFさん
「幼稚園ではとってもお利口さんで、お友達とも仲良く頑張っていましたよ!」
と先生に褒められたのに、家に帰ってきた途端、
玄関でカバンを放り投げ、床にひっくり返って激しい癇癪を起こすFさん。
お母さんにとってその行動は、「私の育て方が悪いの…?」と悲しい気持ちになりますよね。
でも、違うんです。Fさんは幼稚園で、
- 「周りから遅れないように…」
- 「怒られないように…」
と、大人の何倍ものアンテナを張り巡らせて、限界を超えて頑張ってきたんです。
👉 お家という、世界で一番安全で、
“自分を絶対に嫌いにならないお母さん” の前だからこそ…、

張り詰めていた糸が切れて、安心して大爆破していたんですね。
👉 それほど、幼稚園で頑張ってきた証拠なんです。
隣の席の “消しゴムの振動” で動けないGさん
お喋りをする子もいない、静かな個別指導の塾。
なのに、一向に鉛筆が動かないGさん。
👉 静まり返った空間だからこそ、聴覚過敏のGさんにとっては…、
- 隣の席の人がシャーペンをカチカチ鳴らす音
- 消しゴムで机を揺らすゴシゴシという微細な振動
これらが、耳元で工事をしているかのような大音量に化けて聴こえているんです。

サボっているのではなく、そのノイズから自分の脳を守るために、
全エネルギーを使って耐えている最中なんです。
自動ドアが開いた瞬間、お母さんの手を振り払って逃げ出すHくん
楽しいお買い物のはずなのに、お店に入った瞬間に急に走り出したり、
商品棚の陰に隠れて叫びだすHくん。
周囲からの冷ややかな視線に、お母さんは身が縮む思い をしますよね。
でも、責めないでください。自動ドアの向こうは、Hくんにとって
- 眩しすぎる蛍光灯の光
- 大音量のBGM
- あちこちから迫ってくる買い物カートのガタガタ音
などが、同時に襲いかかってくるジャングルなんです。

脳のキャパシティが瞬時にパンクし、
生き延びるために “その場から逃げ出す (闘争・逃走反応) ” しかないんです。
👉 でも正直に…。スーパーで走り回る我が子を見て、
周囲の視線に耐えかね、車の中で手をあげてしまった日はありませんか?
私はそんなお母さんを何人か知っています…。

でも、お母さんが悪いのではありません。あなたも限界だったんです。
“楽しいはず” の場所で、突然崩れ落ちて大号泣するIくん
せっかくの家族旅行、奮発した遊園地。
なのに、着いた途端にアトラクションを 拒否して地べたで泣き叫ぶ Iくん。
「せっかく連れてきたのに!」
とお父さんもお母さんもガッカリして、悲しい気持ちになりますよね。
けれどIくんは、
- 乗ったことがない乗り物への未知の恐怖
- 見たことのない大混雑
- 予期せぬ突然の破裂音
これらに、頭の中の情報処理が完全に追いつかなくなっているんです。

楽しさよりも “恐怖と不安” が勝ってしまい、心が迷子になって泣いていたんです。
「お行儀が悪い」と目線が突き刺さるJくん
お盆やお正月、親戚の家に集まったときのこと。
挨拶もできずに部屋のあちこちの物を触りまくり、ソファーの上で激しくジャンプし続けるJくん。
「しつけがなっていない!」という親戚の視線が痛いですよね。
でも、これもJくんの感覚の工夫なんです。
- いつもと違う部屋の匂い
- 大勢の大人たちの視線
- 特有の緊張感
に圧倒されたJくんは、
👉 自分のパニックになりそうな心を落ち着かせるために、
- あえて体を激しく動かしたり
- お気に入りの触り心地のものを触ったり
することで、

脳のバランスを必死に保とう (感覚探求) としていただけなんです。
私が現場で見つめてきた、愛おしい子どもたちの姿
これらはすべて、私の指導現場で、実際に子どもたちと、
そして悩み抜いてきた保護者の方々と一緒に涙し、笑い合ってきたリアルな姿です。
初めてこの姿を見たとき、
多くの大人は「どうして言うことを聞けないの?」と悩んでしまいます。
👉 でも、彼らの『感覚の世界』を通訳してあげると、
そこには困った子ではなく、今 “ものすごく困っている子” の姿がありました。
👉 そして同時に、我が子のつらさを “我がことのように” 抱え込み、
必死に守ろうとしてきた “頑張りすぎている保護者の方の姿” がありました。

だから、どうか誰も自分を責めないでください。
👉 育て方が悪いわけでも、本人の我慢が足りないわけでもありません。
ただ、私たちよりも感じている世界が、鮮やかで、繊細なんです。
- 「あぁ…、この子は今、眩しいんだな」
- 「あぁ…、この子は今、音が痛いんだな」
そうやって大人がほんの少し目線を合わせ、環境を優しく整えてあげるだけで、
子どもたちは見違えるほど安心して、本来のキラキラした笑顔を見せてくれるようになります。

彼らの世界は、
大人が思うよりもずっと健気で、一生懸命に満ち溢れています。
私たちにできること

子どもたちのつらさに気づいた私たちは、何から始めればいいのでしょうか?
👉 結論:大切なのは “叱って直す” ことではなく、大人が少しだけ歩み寄ること。

今日からできる、優しい4つのステップをご紹介します。
「どうしてだろう?」と考える
⚫︎ 困った行動を困っているサインに翻訳する
- 「わがまま」
- 「サボり」
と決めつける前に、
👉 「今、何がつらい のかな?」と背景を想像してみること。
⚫︎ 子どもの「行動パターン」を観察する
- 「いつもこの場所で泣くよね」
- 「この音のときに耳を塞ぐよね」
などと、
👉 引き金 (トリガー) になっている刺激を見つけること。
⚫︎ 言葉の裏にある「本音」に耳を傾ける
「嫌だ!」の裏に隠された
- まぶしい
- 痛い
- 怖い
という、
👉 本当の気持ちを、大人が代わりに言語化してあげること。
苦手を減らす工夫をする
⚫︎ 便利グッズやアイテムを上手に頼る
- 『聴覚過敏』には、イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン
- 『視覚過敏』には、サングラスや、つば付きの帽子
👉 これらを活用すること。
⚫︎ 刺激を遮断、または軽減する
- 服のチクチクするタグは、あらかじめ全て切り取る
- 給食のにおいがつらいときは、一時的に席を離す
👉 などの、事前の工夫をすること。
⚫︎ 感覚探求を安全に満たす代替案を用意する
- じっとできないときは、バランスボールに座る
- 物を噛んでしまうときは、チューイングトイを渡す
👉 などと、合法的に脳を満足させること。
安心できる環境を整える
⚫︎ 静かに過ごせる逃げ場 (クールダウンの場所) をつくる
- 刺激に圧倒されたときのために、教室の隅にテントを置く
- 家の中に、1人になれるお気に入りの席をつくる
👉 などの、整える場をつくること。
⚫︎ 先の見通しを伝えて不安を減らす
- 「次に何をするか」
- 「いつ終わるか」
これらを、
👉 写真やイラストなどの絵カードを使って、視覚的に分かりやすく伝えること。
⚫︎ 情報の量を減らして、スッキリさせる
- 教室の壁のポスターを減らす
- 勉強机の上には今使う教科書だけを置く
👉 など、目に入るノイズを減らすこと。
子どもの感じ方を尊重する
⚫︎ 「気にしすぎ」「我慢しなさい」を封印する
大人にとっては小さな刺激でも、子どもにとっては
- 「痛い」
- 「苦しい」
- 「つらい」
👉 という紛れもない事実であることを、そのまま受け止めること。
⚫︎ 「今のままで大丈夫」という安心感を伝える
無理に克服させようとせず、
- 「つらかったね」
- 「教えてくれてありがとう」
👉 と、ありのままの感覚に寄り添うこと。
⚫︎ 周りの大人 (学校や親戚) とチームで共有する
- 「この子はこういう感覚の特性がある」
👉 というトリセツを周囲と共有し、みんなで温かく見守る輪を広げること。

これらはどれも、
子どもの『できないこと』を『できるようにする』訓練ではありません。
👉 子どもが『安心して生きられる』ための土台づくりです。
今日からできる声かけ例
❌ 「気にしすぎだよ」
⭕ 「その音が苦手だったんだね」
❌ 「我慢しなさい」
⭕ 「どうしたら少し楽になるかな?」
❌ 「なんでできないの?」
⭕ 「どこが難しかったかな?」
おわりに
感覚の違いを知ることが支援の第一歩
私たちはつい、
- 「どうしてできないんだろう…?」
- 「なぜそんなに気にするんだろう…?」
と考えてしまうことがあります。
しかし今回お伝えしたように、

子どもたちは、
私たちとは違う感覚の世界の中で生活していることがあります。
- 耳をふさぐこと
- 人混みを嫌がること
- 服のタグを気にすること
- じっと待つことが難しいこと
その姿だけを見ると、わがままや甘えのように見えてしまう かもしれません。
👉 でも、その行動の奥には本人なりの理由があるんです。
そしてその多くは、周囲には見えないんです。
私自身、長年子どもたちと関わる中で、困った行動に見えていた ものが、
実は 助けてほしいというサイン だったと気づかされる場面を何度も経験してきました。
👉 だからこそ大切なのは、”行動だけを見る” のではなく、
その子がどんな世界を感じているのか “想像してみる” ことなんです。
👉 理解しようとする姿勢そのものが、子どもにとって大きな安心につながります。
子どもたちは、一人ひとり違う感覚の世界を生きています。

その “違いを知り、受け止める” こと…。
👉 それが、子どもたちが安心して過ごせる環境づくりの第一歩になります。
まとめ
- ✔︎ “みんな同じように感じているわけではない” という視点を持つこと
- ✔︎ “わがまま” ではなく、本当につらいことがある
- ✔︎ “行動” を責めるのではなく、”通訳者” になってあげることが大切
- ✔︎ “育て方が悪いわけでも、本人の我慢が足りないわけでもない”
この続きは、次の記事でさらに深くお伝えします。
次回(第3回)は、“「急な変更」が不安になる理由” 。
予定変更や順番変更への強い不安。
「いつもと違う」「急な予定変更」「初めての場所」などがなぜつらいのか?
発達特性のある子どもたちの “わがまま” ではなく、
“予測できない怖さ” を、現場経験を交えながら書いてみたいと思います。
▶︎ ここまで読んでくださった方には、ぜひ次の記事も読んでいただきたいです。
▶︎ 今回の記事のコラムも、ぜひ、あわせて読んでみてください。
「どうして?」が、「そうだったんだ」に変わるとき、
子どもとの関わり方も、少しずつ変わり始めます。
このシリーズが、その小さなきっかけになれたらうれしく思います。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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