〜 あいまいな指示が苦しい子どもたち 〜
【全6回シリーズ・子どもとの関わり方】第3期 第2回
「ちゃんとしてね」
「ちゃんと聞いてね」
「ちゃんと並んでね」
私たちは日常の中で、何気なくこの言葉を使っています。
ですが、子どもの中には、この「ちゃんと」が分からず、苦しんでいる子がいます。
- 注意されても動けない
- 怒られると固まってしまう
- 何をすれば良いのか分からない
- 「分かった?」と聞かれても答えられない
そんな姿を見ると、大人はつい
- 「どうしてできないの?」
- 「ちゃんと聞いてないのかな?」
と思ってしまうことがあります。
しかし実際には、やる気がない のではなく、
指示の意味を理解できずに困っている 場合があるんです。
👉 結論:分からない・できない のではなく、“理解の入口で止まっている”。
私は運動指導に関わる中で、あいまいな言葉 に苦しむ子どもたちをたくさん見てきました。
そこで 確信したこと は、伝え方を少し変えるだけで、
子どもの表情が大きく変わるということです。
特に発達特性を持つ子どもは、
- あいまいな表現
- 空気を読む指示
- 一度に複数含まれる情報
- 感覚的な言葉
これらを 理解する ことが 難しい 場合があるんです。

“困らせる子” ではなく “実際に困っている子” なんです。
今回は、そのときの出来事を交えながら書いてみたいと思います。
- なぜ “あいまいな指示” が苦しさになるのか
- 指導者や保護者はどう伝えれば良いのか
- 子どもが安心して動ける関わり方
▶︎ この記事は、30年以上、4歳児から高齢者まで指導してきた現場経験をもとに書いています。
発達特性のある子どもは、なぜ「ちゃんとして」が苦しいのか?
👉 結論:「何を・どこまで・どうやって」が、分からない言葉になりやすい。
「ちゃんと」は実はあいまいな言葉
「ちゃんと座って」
この言葉を聞いた大人の方は、
- 静かに前を向いて
- 姿勢よく座る
ことをイメージされたでしょう。
しかし、子どもの受け取り方は、
- 座っているからできている
- 足をぶらぶらしていても、座っている
- 後ろを向いていても、座っている
となるんです。
発達特性のある子どもは “具体” で理解している
また別の子は、
- どの姿勢が正解?
- 動いたらダメ?
- どれくらい静かに?
と混乱してしまいます。
「ちゃんと座って」を具体的に言い換えると、
- 「椅子にお尻をつけよう」
- 「足は床につけよう」
- 「お話ししている人の方を見よう」
と、なります。
「空気を読む」が難しい場合がある
多くの場面では、
- 「普通わかるでしょ」
- 「見ればわかる」
- 「空気読んで」
と言われます。
でも、発達特性のある子にとっては、その 普通 が見えません。

つまり、説明されていないルール なんです。
👉 「 “空気を読む” は教わっていない」ということです。
「ちゃんとして」が増えてしまう理由
本当は怒りたくない。優しく伝えたい。
でも、
- 時間がない
- 周囲の目が気になる
- 何度言っても伝わらない
- 自分も余裕がない
そんな中で、気がつけば
「ちゃんとして!」という言葉が増えてしまうことがあります。
私自身、現場で何度も、

伝わらない苦しさ を 抱える大人たち にも出会ってきました。
👉 指導者も、保護者の方も、
「どう伝えればいいのか分からず困っている」ことがあるんです。
“指示が通らない子” ではなく “理解に困っている子”
👉 結論:伝わらない子 ではなく、
伝える形に変える必要がある子 なんだと、捉え直す こと。
動けないのは “反抗” ではない
発達特性のある子どもは、
- 分からない
- 不安
- 情報過多
- 見通しが持てない
ことで、身体が止まることがあります。
▶︎ 関連する内容として、こちらがおすすめです。
情報整理に時間がかかる子どもたち
大人から見ると、
- 無視している
- やろうとしない
- わざと動かない
- 怠けている
ように見えても、子どもの内側では、
👉 どうしていいか分からずに、止まっている ことがあるんです。
怒られることで不安が強くなることもある
👉 この子は反抗している ではなく、
- 何が分かりにくいんだろう?
- 何に不安を感じているんだろう?
- 情報量が多すぎるかな?
- 今、安心できているかな?

と見ることで、関わり方が変わってきます。
👉 伝わらない子 ではなく、伝わる形を探している子 なんですね。
▶︎ 実際の現場で何度も感じてきたことを、こちらの記事にまとめています。
実際にあった現場でのエピソード
「ちゃんと並んで」で固まったAくん
「ちゃんと並んで!」
でも、Aくんは、体育館の入り口で立ち止まったまま。
周囲の子は並び始め、
先生は少し強い口調になります。
- 「何してるの」
- 「早くして!」
するとAくんは、さらに動けなくなります。
👉 でもAくんの内側では…、
- どこに並べばいいの?
- 何列で?
- 前の人は誰なの?
- 間違えたらどうしよう
という 情報処理が、追いついていなかった んです。
「ちゃんと片づけて」でもやめないBさん
「ちゃんと片付けて!」
と言われても、Bさんは遊び続けています。
大人から見ると、
- 注意を無視している
- 言うことを聞かない
ように見えます。
👉 しかしBさんにとっては…、
- まだ遊んでいる途中だったのに…
- 何からやればいいの?
- どこへ戻せばいいの?
- 一気に全部は無理だよ
と混乱していたのかもしれません。

つまり、やりたくない のではなく、整理できずに止まっている んです。
👉 発達特性のある子の中には、
- 片付け の完成系が見えない
- 優先順位が分からない
- どこまでやれば終わりか分からない
ということがあるんです。
「ちゃんとして」で泣いてしまったCさん
来客者に対して保護者から、
「ちゃんとして!」
と言われたCさんは、泣き出してしまったそうです。
ちゃんとして は、Cさんにとって最もあいまいな言葉だったんです。
保護者の方は、
- 落ち着いて挨拶
- 周囲に合わせる態度
- 今やるべきことを自分で考える
など、多くの意味を含めて使っています。
👉 しかしCさんには、何を直せばいいのか が、分からないんです。
「何回言ったら分かるの!」で黙り込んだDくん
「何回言ったら分かるの!」
と、先生から強い口調で注意されたDくん。
- 下を向く
- 黙る
- 動かない
- 目を合わせない
状態になっています。
これを、
- 「反省していない」
- 「ふてくされてる」
と、受け取られることがあります。
👉 でもDくんの内側では…、
- 強い口調で思考停止
- 不安で頭が真っ白になっている
- 感情処理が追いついていない
という状態だったんです。
「もう行くよ」で急に座り込んだEくん
「もう行くよ!」
と保護者に言われて、
ゲームセンターで急に座り込んでしまったEくん。
保護者の方から見ると、
わがまま や 反抗 に見えることがあります。
👉 しかしEくんの内側では…、
- 切り替えが苦手
- 予定変更がつらい
- 感覚刺激で疲れている
- 気持ちの整理に時間が必要
などが起きていました。
👉 特にASD傾向のある子は、次に何が起こるか が見えないと 不安が強く なるんです。
▶︎ もしよかったら、関連する内容として、こちらもおすすめです。
伝え方を変えると表情が変わったFさん
縄跳びの練習で、何度も止まってしまうFさん。
担任の先生は最初、
- 「ちゃんと見てた?」
- 「なんでできないの?」
と声をかけていました。
するとFさんは、目を潤ませてしまい、身体も動かなくなりました。
👉 でも視点を変えると、Fさんは…
- 周囲の動きが気になって見ていなかった
- どのタイミングで飛ぶのかが分からなかった
- “失敗する怖さ” で身体が固まっていた
んです。
そこで担任の先生は、
- 「まず一回またごう」
- 「縄がきたらジャンプしてみよう」
- 「今のタイミング良かったよ」
と、小さく成功できる声かけ へ伝え方を変えました。
すると、それまで下を向いていたFさんが、
少しずつ笑顔を見せ始め、小さな声で、
「…もう一回やる」
と言った瞬間を、私は今でも覚えています。

できた より先に、「やってみたい」が戻ってきた瞬間だったんですね。
▶︎ 少し視点は変わりますが、こちらの記事もヒントになります。
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子どもに伝わる声かけとは?
👉 結論:何を言うか 以上に どう伝えるか、どう伝わるか が大切。
「短く・具体的に」が基本
短く伝えること。
- 「座って」
- 「ここに置く」
一つずつ伝えること。
- まずカバン
- 次に靴
行動が見える言葉へ変える
行動を具現化すること。
- ❌ 「ちゃんと片付けて」
- ⭕️ 「積み木を箱に入れよう」
視覚的に伝える工夫も有効
- 「赤いテーブルの前に行こう」
- 「○○くんの後ろだよ」
伝わりやすい言い換え例
❌ あいまいな言葉
- 「ちゃんとして」
- 「ちゃんと聞いて」
- 「落ち着いて」
- 「早くして」
⭕️ 具体的な伝え方
- 「イスに座ろう」
- 「先生の顔を見よう」
- 「深呼吸しよう」
- 「時計の長い針が6になったら出発だよ」
▶︎ 「どう関わればいいのか分からない…」そう感じている方は、まずこちらを読んでみてください。
大人が変わると、子どもは安心できる
👉 結論:「ちゃんと」という “便利な抽象語” ではなく “行動” を伝えること。
「分かった」が安心につながる
伝え方 を変えると、子どもの表情が変わることがあります。
👉 それは、子どもが急に 良い子になった のではなく、
- 分かった
- 安心した
- できそうと思えた
からなんです。
子どもを責める前に、伝え方を見直す
👉 発達特性のある子どもは、頑張りが足りない のではなく、
- 指示が抽象的
- 情報量が多い
- 見通しが持てない
ことで、力を出せなくなっていることがあるんです。
安心できる環境が成長を支えていく
安心を優先 するために、伝え方 を変えます。
すると、泣き出してしまった子も、
呼吸が落ち着き、表情も戻ってきます。
これは 甘やかした からではなく、
- 「理解できた」
- 「安心できた」
ことで、脳と身体が動ける状態になったからなんです。
👉 子どもを変える前に、まず “伝え方” を整えてみる。

その小さな変化が、子どもの安心につながっていきますよ。
▶︎ あなたとこの記事は、きっとつながると思います。読んでみてください。
おわりに
あいまいな指示が苦しい子どもたち は、
決して わがまま でも やる気がない わけでもありません。
ただ、どう動けば良いのか分からない ことがあります。
だからこそ大切なのは、
- 分かりやすく
- 具体的に
- 安心できる形で伝えること
です。
私は現場で何度も、
分かった瞬間に動き出す子どもたち を見てきました。
子どもを変える前に、まず大人の 伝え方 を 整えて いくこと。
その積み重ねが、
子どもの安心と自信につながっていくんだと 確信 しています。
あなたが、もし今
- 「うまく伝えられない」
- 「何度言っても伝わらない」
と悩んでいたら…、

大丈夫ですよ!
👉 それは 関わり方が間違っている のではなく、
「その子に合う伝え方」を、一緒に探している途中なんです。
まとめ
- ✔︎ 「ちゃんと」は抽象語になりやすい
- ✔︎ 発達特性のある子は “具体” で理解しやすい
- ✔︎ 動けないのは反抗ではなく、不安の場合もある
- ✔︎ 伝え方を変えると、安心して動けることがある
この続きは、次の記事でさらに深くお伝えします。
次回(第3回)は、“「急な変更」が不安になる理由” 。
予定変更や順番変更への強い不安。
「いつもと違う」「急な予定変更」「初めての場所」などがなぜ苦しいか。
発達特性のある子どもたちの “わがまま” ではなく、
“予測できない怖さ” を、現場経験を交えながら書いてみたいと思います。
▶︎ ここまで読んでくださった方には、ぜひ次の記事も読んでいただきたいです。
▶︎ 今回の記事のコラムも、ぜひ、あわせて読んでみてください。
「どうして?」が、「そうだったんだ」に変わるとき、
子どもとの関わり方も、少しずつ変わり始めます。
このシリーズが、その小さなきっかけになれたらうれしく思います。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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