第3期 第1回 コラム記事

ひとことコラム

『 「もう帰るよ!早くして」が届かないとき 』
〜 よっちゃんの ひとことコラム 〜


スーパーの通路で、
突然立ち止まってしまった男の子がいました。

最初は、
「少し疲れたのかな」くらいに見えました。

でも、
お母さんが手を引いても、男の子は動きません。

「行こう」「もう帰るよ」「ちゃんとして」

声をかけても、
その場に座り込んでしまいました。


周囲の人たちが、少しずつその親子を見る。
お母さんの声にも、だんだん焦りが混ざっていきます。

「なんで急に?」
「さっきまで普通だったでしょ」

きっと、早く帰りたかったと思います。
周りの目も気になったと思います。


でも私は、その男の子を見ながら、
「この子は今、動かないんじゃなく、動けないんだ」
と感じていました。

スーパーの中には、たくさんの刺激があります。

明るい照明。店内放送。人の話し声。
カートの音。におい。色。情報。


私たちが何気なく受け流しているものが、
発達特性のある子どもにとっては、
一気に押し寄せてくることがあります。

頭の中がいっぱいになり、身体が止まってしまう。

それは、「わがまま」ではなく、
“もうこれ以上、がんばれない” というサインなのかもしれません。


でも、その苦しさは、
周囲からは見えにくいことがあります。

だから、
「ちゃんとして」「甘やかしすぎ」「親が困るからやめなさい」

そんな言葉だけが、
親子に向けられてしまうこともあります。


私は、あの日のお母さんもまた、
苦しかったのではないかと思っています。

子どもをなんとか動かそうとしながら、周囲にも気を遣い、
「迷惑をかけてはいけない」と張りつめていた。

本当は、お母さん自身も、
助けてほしかったのかもしれません。


発達特性のある子どもたちは、
「困らせたい」のではなく、

「どうしたらいいか分からない」
状態になっていることがあります。

そして、その隣で頑張っている保護者もまた、
見えない疲れを抱えていることがあります。


私は現場で、
そういう親子に何度も出会ってきました。

だからこそ、”困った行動” として見る前に、
「この子は今、どんな不安を感じているんだろう」

と想像できる大人が、
少しずつ増えていってほしいと思っています。


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