「気にしすぎ」ではなかった|感覚過敏・感覚探求から見える子どもの世界

発達の凸凹な子どもたち

〜 感覚過敏の子どもが感じている世界 〜
【全6回シリーズ・子どもとの関わり方】第3期 第4回


指導の現場に立つと、発達特性のある子どもたちと関わる機会も数多くあります。

  • 活動中、突然耳をふさぐ子
  • 体育館に入った途端、落ち着かなくなる子
  • みんなと同じ場所にいるのに、どこかつらそうな表情を見せる子

以前の私は、

  • 「大きな音が苦手なのかな…?」
  • 「今日は気分が乗らないのかな…?」

と考えていました。

しかし、子どもたちと 向き合い続ける中で確信したこと があります。

それは、


👉 結論:私たちと子どもたちでは、同じ世界を見ているようで、
     実は違う世界を感じていることがある。


ということです。

  • 私たちには普通に聞こえる笛の音
  • 気にならない蛍光灯の光
  • 何とも思わない服のタグや人との距離感

それらが、ある子どもにとっては
強い不快感苦しさ(つらさ) になっていることがあるんです。

周囲からは、

  • 「気にしすぎ…」
  • 「そのくらい我慢できるでしょう…」

と思われているかもしれません。

でも本人にとっては、決して 大げさ ではないんです
本当に つらい んです。

また反対に、

  • 体を揺らしたり
  • 何度もジャンプしたり
  • 触りたがったり

する、子どももいます。

一見すると 落ち着きがない ように見えるその行動も、
実は 身体感覚整える ために、必要な行動である 場合があるんです。

今回は、

 ✔︎ この記事を読んで分かること 
  1. 感覚過敏とは?
  2. 感覚探求とは?
  3. 体育館や集団活動で何が起きているのか?
  4. 私たちにできる理解と関わり方

これらについて、現場での経験も交えながらお話しします。


もし、

  • どうしてうちの子は耳をふさぐんだろう…?
  • なぜ集団活動が苦手なんだろう…?

そんなふうに 感じたことがある方 は、ぜひ 最後まで 読んでください。
子どもたちが感じている 世界の見え方 が、きっと大きく変わると思います。

48〜73分

▶︎ この記事は、30年以上、4歳児から高齢者まで指導してきた現場経験をもとに書いています。


  1. もしかして、こんなことはありませんか?
    1. 保護者が驚く “感覚過敏あるある” チェックリスト
    2. 実は私も、現場で初めて知りました
  2. 感覚の感じ方は、人によって違う
    1. 感覚過敏とは何?
    2. 感覚探求とは何?
  3. “わがまま” ではなく、本当につらいことがある
    1. 周囲からは見えにくい困りごと
    2. 本人も理由を説明できないことがある
    3. 大人が持っておきたい視点
  4. 体育館や集団活動で起こりやすいこと
    1. 体育館は刺激が集まる場所
    2. 待ち時間が苦手な理由
  5. 実際にあった現場でのエピソード
    1. 「早く着替えなさい!」のプレッシャーでパニックになるAさん
    2. 眠りたいのに、眠れないBくん
    3. 校門の前で足がすくむ小学1年生のCくん
    4. Dくんはノートが破れるほどの筆圧王
    5. “食事の時間” が “恐怖の部屋” に変わってしまうEさん
    6. バイバイした瞬間に、お家で爆発する5歳のFさん
    7. 隣の席の “消しゴムの振動” で動けないGさん
    8. 自動ドアが開いた瞬間、お母さんの手を振り払って逃げ出すHくん
    9. “楽しいはず” の場所で、突然崩れ落ちて大号泣するIくん
    10. 「お行儀が悪い」と目線が突き刺さるJくん
  6. 私が現場で見つめてきた、愛おしい子どもたちの姿
  7. 私たちにできること
    1. 「どうしてだろう?」と考える
    2. 苦手を減らす工夫をする
    3. 安心できる環境を整える
    4. 子どもの感じ方を尊重する
    5. 今日からできる声かけ例
  8. おわりに
    1. 感覚の違いを知ることが支援の第一歩
  9. まとめ

保護者が驚く “感覚過敏あるある” チェックリスト

あなたのお子さんに、こんな様子は見られませんか?

□ 体育館や運動会で耳をふさいだり、その場から離れたがったりする
□ 洋服のタグや靴下の縫い目を嫌がることがある
□ 掃除機やドライヤー、チャイムなどの音をとても嫌がる
□ 人混みやにぎやかな場所に行くと疲れやすい
□ “わがまま” や “気分の問題” と思っていた行動に理由がある気がする

いかがでしたか?

もちろん、ひとつでも当てはまったからといって 感覚過敏 とは限りません。
しかし、子どもによっては 触覚 などの刺激を 私たち以上に 強く感じていることがあります。

よっちゃん
よっちゃん

大切なのは…、

👉 「なぜそんな行動をするんだろう?」と考えてみることなんです。


実は私も、現場で初めて知りました

子どもが見せる困った行動の裏側には、
実は 見えないつらさ隠れている ことがあります。

👉 耳をふさいでいる のは、話を聞きたくないから ではなかったのです。


👉 結論:みんな同じように感じているわけではない
      という 視点 を持つこと。


⚫︎ 例えば…、まぶしさ の基準が違う。

大人にとっては 少し明るい晴れの日 でも、ある子どもにとっては、

車のヘッドライトを至近距離で浴びているようなまぶしさ に感じられて、
目を開けていられないことがあるんです。


⚫︎ 例えば…、音 の聞こえ方が違う。

「先生の話を聞きなさい」
あなたも子どもの頃に、一度 は言われたことがある言葉ではないでしょうか?

でも、もし教室の中で、

  • 先生の声
  • 友達の鉛筆の音
  • エアコンの音
  • 廊下の足音
  • 窓の外の車の音

が、全部 同じ大きさ で聞こえていたとしたらどうでしょう。

私だったら、きっと先生の話どころではありません。

👉 感覚過敏 のある子は、毎日そんな世界で頑張っている んです。


感覚過敏とは何?

👉 特定の刺激を 人一倍強く不快に、
 ときには痛みとして感じてしまう状態 のことです。


【聴覚過敏】

  • 運動会のピストルの音、風船が割れる音、体育館の反響音が 怖くて、耳をふさいでうずくまってしまう。
  • トイレの自動洗浄の音や、ドライヤーの音が 苦手 で、公共のトイレに入れない。

【触覚過敏】

  • 服の首元のチクチクするタグや、靴下の縫い目が 剣山で刺されている ように痛く感じ、服を着るのを嫌がる。
  • 手に泥や粘土、のりがつくことを 極端に嫌がり、図工や砂場遊びに参加できない。

【視覚過敏】

  • 蛍光灯の細かなチカチカ(明滅)が 気になって 集中できない。
  • 教室の壁に貼られたたくさんのポスターや予定表が目に 入りすぎて、脳が疲れてしまう。

感覚探求とは何?

👉 感覚過敏とは逆 に、ある感覚に対して 鈍麻(感じにくい) だったり、
 脳がもっと刺激を欲しがったりして、

  特定の刺激を自ら積極的に求めにいく行動 のことです。


【固有覚・前庭覚(体の傾きや揺れ、筋肉の手応え)の探求】

  • 授業中、椅子をガタガタと大きく揺らしたり、常に体をモジモジ・ソワソワと 動かして いる。
    (脳を 覚醒させるために 揺れを求めている)
  • 友達や壁に、わざと「ドスン!」と強い力で ぶつかりに いく。
  • 高いところから 飛び降りる、ぐるぐる激しく 回り続ける、といったスリルを 過剰 に好む。

【触覚・口唇覚の探求】

  • 服の袖や襟元、鉛筆の後ろ、タオルなどを ずっと口に入れて 噛んでいる。
  • ツルツルした壁、ふわふわしたぬいぐるみなど、特定の触り心地のものを ずっと触り続けて いる。

【視覚・聴覚の探求】

  • ミニカーの車輪を目の前に持ってきて、手で回しながらジーッと回り続ける 様子を見つめる
  • 手を目の前でヒラヒラと動かして、光と影の 動きを楽しむ
  • おもちゃから出る同じ音を、何度も何度も 繰り返し 鳴らして 聴く

👉 これらを知って、「私の育て方が悪かったわけじゃないんだ…」と、

自己否定 から 解放 された保護者の方の顔を、今でも思い出します。


▶︎ 関連する内容として、こちらがおすすめです。


また別の保護者の方が、こんなことを話してくださいました。

ずっとこの子は、わがままなんだと思っていました

  • 服を嫌がる
  • 給食を食べない
  • 運動会で耳をふさぐ

どうしてできないのか分からず、何度も叱ってしまったそうです。

「でも後になって、その行動の多くが 感覚のつらさ から来ていたことを知りました」

そして涙を流しながら、

もっと早く知りたかった」と話してくださいました。

私は今でも、この言葉を忘れられません。


⚫︎ 食べ物の好き嫌い ではなく 砂を噛むような苦痛

給食で特定の食べ物を頑なに拒否し、口に入れられると吐き出してしまう子がいます。

ただの偏食 とか 甘え とか言われがちですが、

本人にとっては

  • 生魚の生臭さが何倍にも強調されてドブのような臭いに感じる
  • 特定の食感が、口の中で砂やゴムを噛んでいるように不快

など、

👉 生存を脅かされる ほどの 恐怖嫌悪感 を覚えることがあるんです。


⚫︎ ずる休み ではなく バッテリー切れ

学校へ行く時間になると 頭痛腹痛 を訴えたり、
布団から起き上がれなくなったりする姿は、怠け に見えるかもしれません。

しかし、前述の感覚過敏などで 毎日過剰な エネルギーを使い果たしている子どもは、

👉 本当に心身のエネルギーが ゼロ(充電切れ)になっており、
 体が動かない状態にあるんです。


周囲からは見えにくい困りごと

⚫︎ 身体の傷や熱とは違い、発達特性による困りごとの多くは 目に見えません

そのため、本人が 限界 を迎えて 行動 として表に出るまで、

👉 周囲が 気づけない という 難しさ があるんです。


⚫︎ 1人でいるのが好き に見えて、実は 混ざり方が分からない

休み時間にいつもポツンと1人で校庭の隅にいる子がいます。

周りは、

  • マイペースな子だな
  • 1人が好きなんだな

と思いがちですが、本人の 心の中 では

  • みんなの輪に入りたいけれど、なんて声をかけたらいいか分からない…
  • みんなの話すスピードが速すぎて、会話のタイミングがつかめない…

などと、

👉 強い 孤独感焦り を感じていることがあるんです。


⚫︎ やる気がない に見えて、実は 見通しが持てなくて不安

  • 今からお出かけするよ
  • 次の教室に移動するよ

と言われても、なかなか 動かない(動けない)子がいます。

周囲には 反抗 しているように見えますが、実は

  • 次に何が起きるのか
  • どこへ行くのか

の予測がつかず、恐怖足がすくんでいる 状態です。

👉 頭の中でスケジュールが 映像化 できないための 困りごと なんです。


▶︎ 関連する内容として、こちらがおすすめです。


⚫︎ 話を聞いていない に見えて、実は 頭の中の片付けが追いつかない

先生や親の指示を最後まで聞けずに別のことを始めてしまうとき、
本人は サボっている わけではありません。

  • 「宿題を出して…」
  • 「教科書を机に置いて…」
  • 「筆箱から鉛筆を出して…」

という複数の指示(ワーキングメモリの過負荷)を 同時に処理 できず、

👉 頭の中がフリーズしてしまっている状態です。


▶︎ 関連する内容として、こちらもおすすめです。


本人も理由を説明できないことがある

  • 「どうしてそんなことするの?」
  • 「何が嫌なの?」

と聞かれても、

子ども自身が「自分の状態」を言葉にできない、あるいは 気づいていない ことがあるんです。

👉 理由を言わないのではなく、答えられないんです。


▶︎ もしよければ、こちらの記事も参考にしてみてください。


⚫︎ 何が嫌なのか を言語化する 語彙(ごい)がない

例えば、服のタグがチクチクして不快なとき、

「服のこの部分の擦れがチクチクして痛いから脱ぎたい」
論理的に説明 できる子どもは稀です。

自分の体に起きている不快感を 言葉変換できない ため、

  • 「とにかくイライラする!」
  • 「この服は絶対に嫌だ!」

などと、

👉 泣き叫んだり暴れたりする(行動)ことでしか 表現 できないんです。


⚫︎ みんなも自分と同じだ思い込んでいる

生まれたときから その感覚生きている ため、
その子は 周りのみんなも同じ苦しさを我慢している思っている ことがあるんです。

教室の音がうるさくて 頭が痛く ても、

「みんなこの大音量の中で 耐えている んだから、自分だけ『うるさい』って言うのは おかしい んだ」

思い込み

👉 限界まで我慢した 結果、
  突然 体調を崩したり 教室を飛び出したり するんです。


⚫︎つらいという感覚気づくのが遅い

  • 疲れや空腹
  • イライラ
  • 体調の悪さ(内受容感覚)

自覚するのが苦手 な子がいます。

本人は「平気!」と思って遊んでいても、
脳や体は すでに限界 を迎えており、自覚がないまま 突然 エネルギーが切れてしまい、

👉 激しい 癇癪(かんしゃく)体調不良 として 爆発 してしまうんです。


大人が持っておきたい視点

だからこそ、周りの大人の方は 行動(怒っている、動かない) を責めるのではなく、
通訳者 になってあげることが 大切になってくる んです。

例えば、「なんでやらないの!」ではなく、

  • 「やることが多くて分からなくなっちゃったかな? 」
  • 「1つずつやろうね」

と声をかけてみてください。

このように、大人の方の 目線(視点)切り替えて あげるんですね。


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体育館や集団での運動プログラムは、子どもたちにとって本来 楽しい場所 であるはずです。

しかし、発達特性のある子にとっては、その空間の特性やルールが、

まるで 難易度の高い障害物競走 のようになっていることがあるんです。


体育館は刺激が集まる場所

体育館は、感覚過敏を持つ子どもにとって 五感の刺激のジャングル なんです。

特に 音の反響 と、視覚的な広さ によって、

子どもの脳が パニック に陥れやすいんです。


【音のパニック】「ワ〜ン ワ〜ン」と響く残響音と、複数の音の同時多発

体育館は声や音が四方に反響します。

  • 先生のホイッスルの音
  • 他の学年の歓声
  • ボールが床を叩く「ドン、ドン」という重低音
  • 靴の「キュッ」という摩擦音

👉 これらがすべて壁に跳ね返り、大きな塊 となって に飛び込んできます。

この 音が空間に充満して逃げ場がない感覚 は、

聴覚過敏 の子にとって 耐えがたい恐怖 なんです。


【視覚の混乱】広すぎる空間と、激しい動きの視覚刺激

仕切りがない広い空間は、どこに立てばいいか という 空間認知狂わせ ます。

さらに、

  • 四方八方で友達が走り回る
  • ボールが飛び交う

といった 予測不能な動くモノ が常に視覚に 入り続ける ため、

脳が 視覚情報の処理 をしきれずに、クラクラして 疲弊 してしまうんです。


【においの不快】

独特の ワックスのにおい や、多くの人の 汗のにおい がこもりやすく、

嗅覚過敏 の子が 気持ち悪くなって入れない 原因になることもあるんです。


待ち時間が苦手な理由

  • 順番を待つ
  • 1列に並んで出番を待つ

というのは、体育や運動プログラムで 必ず発生 する時間です。

ここを耐えられない姿は、

  • お行儀が悪い
  • わがまま

と叱られがちですが、理由を知れば 対策 が見えてくるんです。


▶︎ その対策には、こちらの記事を参考にしてみてください。


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私たちが 何気なく 過ごしている毎日の中に、
子どもたちが 命がけで 生きている 瞬間 があります。

それは 困った行動 ではなく、彼らなりの SOSのサイン なんです。

お父さん、お母さん、先生方、

👉 どうか自分を責めずに、そして子どもを責めずに、
 彼らが見ている世界をそっと覗いてみてください。


「早く着替えなさい!」のプレッシャーでパニックになるAさん

パジャマのまま、リビングの真ん中でボーッと突っ立っているAさん。
「早く着替えなさい!」と焦るお母さんの声が響きます。

このとき、Aさんの頭の中は、

まるで「見たこともない異国の言葉で、同時に10個のタスクを命令されている」
ような大混乱の中にあります。

  • パジャマを脱ぐ
  • 下着の前後を確認する
  • ボタンを上から順に留める
  • ズボンの裾に足を片方ずつ通す…

 脳の処理スピード(ワーキングメモリ)がいっぱいになり、
👉 焦れば焦るほど頭の中が真っ白になって、本当に体が動かなくなっているんです。

サボっているのではなく、

押し寄せる情報に 圧倒されて 立ち尽くしていただけなんですね。


眠りたいのに、眠れないBくん

夜10時。

布団に入ったはずなのに、
いつまでもゴロゴロ、ピョンピョンと動き回り、ときには布団を蹴り飛ばして暴れるBくん。

「いい加減にしなさい!」

と言いたくなりますが、一番苦しいのは本人なんです。

昼間に学校(幼稚園)で浴びた

  • 蛍光灯の眩しさ
  • 友達の声
  • 黒板をひっかく音
  • 張り詰めた緊張感…

という刺激が、夜になっても脳の中で大音量で鳴り響き、
ブレーキが壊れた車のように止まれない状態(過覚醒)なんです。

👉 「本当は静かに眠りたいのに、脳が覚醒しちゃって休ませてくれない!」

という、寂しさと恐怖を抱えながら、

体を必死に動かすことで、

脳の興奮を 鎮めよう(感覚探求)としていただけなんですね。


校門の前で足がすくむ小学1年生のCくん

ランドセルを背負い、学校の近くまでは来られたのに、

校門の手前でピタッと足が止まり、

お母さんの服をぎゅっと掴んで離さないCくん。

そこから見える 校庭 は、

感覚過敏のCくんにとって「まぶしすぎる光」と、

「何十人もの 大歓声がザワザワと響く空間」という、恐ろしい場所 に映っています。

「あそこに入ったら、また僕の耳と目が痛くなる」

恐怖で足がすくんでいる我が子を前に、

お母さんも「どうして……」と 泣きたく なりますよね。

誰も悪くありません。

Cくんは、ただ自分の 心と体を守る ために、必死に 耐えている だけなんです。

なぜならそこは、

Cくんにとって「戦場」へ向かう 入り口 なんですから。


Dくんはノートが破れるほどの筆圧王

いつも鉛筆の芯を バキバキ折り
消しゴムでゴシゴシ擦りすぎて ノートを破いて しまうDくん。

「乱暴に扱っちゃダメでしょ」

と注意されますが、本人はいたって 真面目 なんです。

👉 自分の筋肉や関節にかかっている 力(固有覚)感じにくい ため、

  • これくらい強く握って
  • これくらい強く押し付けないと
  • 文字を書いている感覚が得られない

のです。

常に100m走を全力疾走しているような力加減で生きているため、

ノートが1ページ終わる頃には、手も心も ヘトヘトになってしまいます。


“食事の時間” が “恐怖の部屋” に変わってしまうEさん

給食の時間、トレイを前に 青い顔 をして固まってしまうEさん。

  • 好き嫌いはダメ
  • 一口でも食べなさい

という優しい促しも、ときには 追い詰める刃 になるんです。

嗅覚視覚 が過敏な子にとって、狭い教室 に充満している

  • カレーの強いにおい
  • ご飯から立ち上る熱い湯気
  • 友達の牛乳のにおい
  • お皿がぶつかるカチャカチャした音

👉 これらは、それだけで めまいがする ほどの パニック空間 なんです。

食べられないのは わがまま ではなく、

その空間にいるだけで、

心が お腹いっぱいになってしまっていたからなんです。


バイバイした瞬間に、お家で爆発する5歳のFさん

「幼稚園ではとっても お利口さん で、お友達とも 仲良く 頑張っていましたよ!」

と先生に褒められたのに、家に帰ってきた途端、
玄関でカバンを 放り投げ、床にひっくり返って激しい 癇癪を起こす Fさん。

お母さんにとってその行動は、

私の育て方が悪いの?

悲しい 気持ちになりますよね。

でも、違うんです。

Fさんは幼稚園で、

  • 周りから遅れないように…
  • 怒られないように…

と、大人の何倍もの アンテナ を張り巡らせて、限界を超えて 頑張ってきたんです。

お家という、世界で一番安全で、
自分を絶対に嫌いにならないお母さんの前だからこそ、

張り詰めていた 糸が切れて、安心して 大爆破 していたんですね。

👉 それほど、幼稚園で頑張ってきた証拠なんです。


隣の席の “消しゴムの振動” で動けないGさん

お喋りをする子もいない、静かな個別指導の塾。

なのに、一向に鉛筆が動かないGさん。

👉 静まり返った空間 だからこそ、聴覚過敏のGさんにとって

  • 隣の席の人がシャーペンをカチカチ鳴らす音
  • 消しゴムで机を揺らすゴシゴシという微細な振動

が、耳元で工事 をしているかのような大音量に化けて 聴こえて いるんです。

サボっているのではなく、

そのノイズから自分の脳を守るために、
全エネルギーを使って 耐えている 最中なんです。


自動ドアが開いた瞬間、お母さんの手を振り払って逃げ出すHくん

楽しいお買い物のはずなのに、お店に 入った瞬間 に急に走り出したり、
商品棚の陰に 隠れて 叫びだすHくん。

周囲からの冷ややかな視線に、お母さんは 身が縮む思い をしますよね。

でも、責めないでください。

自動ドアの向こうは、Hくんにとって

  • 眩しすぎる蛍光灯の光
  • 大音量のBGM
  • あちこちから迫ってくる買い物カートのガタガタ音

が同時に襲いかかってくるジャングルなんです。

脳のキャパシティが瞬時にパンクし、

生き延びるために「その場から逃げ出す(闘争・逃走反応)」しかないんです。


でも正直に、スーパーで走り回る我が子を見て、周囲の視線に耐えかねて、
車の中で手をあげてしまった日はありませんか?

私はそんなお母さんたちを何人も見てきました。

でも、あなたが悪いのではありません。お母さんも限界だったんです。


“楽しいはず” の場所で、突然崩れ落ちて大号泣するIくん

せっかくの家族旅行、奮発した遊園地。

なのに、着いた途端にアトラクションを 拒否 して地べたで 泣き叫ぶ Iくん。

「せっかく連れてきたのに!」
とお父さんもお母さんもガッカリして、悲しい気持ち になりますよね。

けれどIくんは、

  • 乗ったことがない乗り物への未知の恐怖
  • 見たことのない大混雑
  • 予期せぬ突然の破裂音

に、頭の中の 情報処理 が完全に追いつかなくなっているんです。

楽しさよりも “恐怖と不安” が勝ってしまい、

心が 迷子になって泣いていたんです。


「お行儀が悪い」と目線が突き刺さるJくん

お盆やお正月、親戚の家に集まったときのこと。

挨拶もできず に部屋のあちこちの物を 触り まくったり、
ソファーの上で激しく ジャンプ し続けたりするJくん。

「しつけがなっていない」

という 親戚の視線痛い ですよね。

でも、これも感覚の工夫なんです。

  • いつもと違う部屋の匂い
  • 大勢の大人たちの視線
  • 特有の緊張感

に圧倒されたJくんは、

👉 自分のパニックになりそうな心を落ち着かせるために、

  • あえて体を激しく動かしたり
  • お気に入りの触り心地のものを触ったり

することで、

脳の バランス を必死に 保とう(感覚探求)としていただけなんです。


これらはすべて、私の指導現場で、実際に子どもたちと、
そして悩み抜いてきた保護者の方々と一緒に涙し、笑い合ってきたリアルな姿です。

初めてこの姿を見たとき、
多くの大人は「どうして言うことを聞けないの?」と悩んでしまいます。

でも、彼らの『感覚の世界』を通訳 してあげると、
そこには 困った子 ではなく 今、ものすごく困っている子 の姿がありました。

そして同時に、我が子のつらさを我がことのように抱え込み、
必死に守ろうとしてきた 頑張りすぎている保護者の方の姿 がありました。

だから、どうか 誰も自分責めないで くださいね。

👉 育て方が悪いわけでも、本人の我慢が足りないわけでもありません。
 ただ、感じている世界が少しだけ、鮮やかで、繊細なだけなんです。

  • 「あぁ、この子は今、眩しいんだな」
  • 「あぁ、この子は今、音が痛いんだな」

そうやって大人がほんの少し目線を合わせ、
環境を優しく整えてあげるだけで、

子どもたちは見違えるほど 安心 して、
本来の キラキラした笑顔 を見せてくれるようになります。

彼らの世界は、
大人が思うよりもずっと 健気 で、一生懸命 に満ち溢れているんです。


子どもたちのつらさに気づいた私たちは、何から始めればいいのでしょうか?


👉 結論:大切なのは “叱って直す” ことではなく、
      大人が少しだけ歩み寄ること


今日からできる、優しい4つのステップをご紹介します。


「どうしてだろう?」と考える

⚫︎ 困った行動困っているサイン に翻訳する

  • 「わがまま」
  • 「サボり」

と決めつける前に、
「今、何がつらい のかな?」と 背景を想像 してみること。


⚫︎ 子どもの行動の「パターン」を観察する

  • 「いつもこの場所で泣くよね」
  • 「この音のときに耳を塞ぐよね」

と、引き金(トリガー)になっている 刺激を見つける こと。


⚫︎ 言葉の裏にある「本音」に耳を傾ける

「嫌だ!」の裏に隠された

  • まぶしい
  • 痛い
  • 怖い

という 本当の気持ち を、大人が 代わりに言語化 してあげること。


苦手を減らす工夫をする

⚫︎ 便利グッズアイテム を上手に頼る

聴覚過敏には イヤーマフノイズキャンセリングイヤホン
視覚過敏には サングラス や つば付きの帽子 を活用すること。


⚫︎ 刺激を 遮断 または 軽減 する

服のチクチクするタグはあらかじめ全て切り取る、
給食のにおいがつらい時は一時的に席を離すなど、事前の工夫をすること。


⚫︎ 感覚探求を 安全に満たす 代替案を用意する

じっとできないときは バランスボール に座る、
物を噛んでしまうときは チューイングトイ を渡すなど、合法的に脳を満足させること。


安心できる環境を整える

⚫︎ 静かに過ごせる 逃げ場(クールダウンの場所) をつくる

刺激に圧倒されたときのために、教室の隅にテントを置く、
家の中に 1人になれるお気に入りの席 をつくること。


⚫︎ 先の見通し を伝えて不安を減らす

「次に何をするか」「いつ終わるか」を、
写真やイラストなどの絵カードを使って、視覚的に分かりやすく伝えること。


⚫︎ 情報の量 を減らして、スッキリさせる

教室の壁のポスターを減らす、
勉強机の上には今使う教科書だけを置くなど、目に入るノイズを減らすこと。


子どもの感じ方を尊重する

⚫︎ 「気にしすぎ」「我慢しなさい」を封印する

大人にとっては小さな刺激でも、子どもにとっては

  • 「痛い」
  • 「苦しい」

という 紛れもない事実 であることを そのまま 受け止めること。


⚫︎ 「今のままで大丈夫」という安心感を伝える

無理に克服させようとせず、

  • 「つらかったね」
  • 「教えてくれてありがとう」

と、ありのまま の感覚に 寄り添う こと。


⚫︎ 周りの大人(学校や親戚)とチーム で共有する

「この子はこういう感覚の特性がある」という トリセツ を周囲と 共有 し、
みんなで温かく 見守る 輪を広げること。


👉 これらはどれも、
  子どもの『できないこと』できるようにする訓練 ではありません。
  子どもが『安心して生きられる』ための 土台づくり です。


今日からできる声かけ例

❌ 「気にしすぎだよ」
「その音が苦手だったんだね」


❌ 「我慢しなさい」
「どうしたら少し楽になるかな?」


❌ 「なんでできないの?」
「どこが難しかったかな?」


感覚の違いを知ることが支援の第一歩

私たちはつい、

  • 「どうしてできないんだろう…?」
  • 「なぜそんなに気にするんだろう…?」

と考えてしまうことがあります。

しかし今回お伝えしたように、

子どもたちは私たちとは 違う感覚の世界の中 で生活していることがあります。

  • 耳をふさぐこと
  • 人混みを嫌がること
  • 服のタグを気にすること
  • じっと待つことが難しいこと

その姿だけを見ると、わがまま甘え のように見えてしまうかもしれません。

でも、その行動の奥には本人なりの 理由 があるんです。
そしてそれは多くの場合、周囲には見えない つらさ なんです。


私自身、長年子どもたちと関わる中で、困った行動 に見えていたものが、
実は 助けてほしいというサイン だったと気づかされる場面を何度も経験してきました。

だからこそ大切なのは、行動だけ を見るのではなく、
その子がどんな世界を感じているのか 想像 してみることなんです。

理解しようとする 姿勢 そのものが、子どもにとって 大きな安心 につながります。


子どもたちは、一人ひとり違う感覚の世界 を生きています。

その 違いを知り受け止める こと。

それが、子どもたちが 安心して 過ごせる 環境 づくりの第一歩になります。


  • ✔︎ “みんな同じように感じているわけではない” という視点を持つこと
  • ✔︎ “わがまま” ではなく、本当につらいことがある
  • ✔︎ “行動” を責めるのではなく、“通訳者” になってあげることが大切
  • ✔︎ 育て方が悪いわけでも、本人の我慢が足りないわけでもない”

この続きは、次の記事でさらに深くお伝えします。

次回(第3回)は、“「急な変更」が不安になる理由”

予定変更や順番変更への強い不安。
「いつもと違う」「急な予定変更」「初めての場所」などがなぜつらいのか。

発達特性のある子どもたちの “わがまま” ではなく、
“予測できない怖さ” を、現場経験を交えながら書いてみたいと思います。


▶︎ ここまで読んでくださった方には、ぜひ次の記事も読んでいただきたいです。


▶︎ 今回の記事のコラムも、ぜひ、あわせて読んでみてください。


どうして?」が、「そうだったんだ」に変わるとき、
子どもとの関わり方も、少しずつ変わり始めます。

このシリーズが、その小さなきっかけになれたらうれしく思います。


最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。


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