第2シリーズ 第6回
こんにちは、よっちゃんです。
私は30年以上にわたり、4歳児から高齢の方々に対して、運動の楽しさや体を動かす大切さを伝えています。
長く子どもたちと関わっていると、”昔の自分だったら、きっと叱っていたな” と思う場面に出会います。
けれど今は、少し立ち止まれるようになりました。
その変化こそが、“子どもたちから教えてもらった学び” だと思います。
教える立場でありながら、教えられることの方が、ずっと多かった。
若いあなたには、まだ実感が無いかもしれませんね?
でも、30年以上この仕事を続けてきた私は、心からそう感じています。
そこで今回は、『 安心を未来へ・学びを広げる、つないでいく 』(最重要!)4選 を、お伝えします。
- 指導とは、”安心を整える” こと
- “問い続ける姿勢” が、子どもを育てる
- “安心” は、行動範囲を広げる
- “成果” より “空気を整えること” を大切に
それでは、具体的な経験談をお話しします。
変わっていく “指導” の形
私が若いころは、
“指導=正しく導くこと” だと思っていました。
出来ないことを直し、うまく出来るようにする。
それが “成果” だと信じていたのです。

けれど今は、違う考えを持っています。
“正しさ” よりも、”安心” が先にある。
子どもが安心して動けるとき、自然と挑戦し、工夫し、自分の形を見つけていきます。
大人の役目は、その “安心の場” を整えること。
叱るより、待つ。導くより、支える。
それが、今の私の “指導” の形です。
“正しさ” から “安心” へ!
例 ①:フォームを直すか、空気を整えるか
跳び箱で踏み切りが合わない子。
若い頃の私なら、
- 足の位置を修正し
- 手のつき方を細かく指示し
- 「ほら、こう!」と何度もやらせた
結果として、形は整います。
でも、表情は固い。

今の私は、まずこう言います。
「ちょっと緊張してるかな?」
そして、
- 一度深呼吸
- マットで軽くジャンプ遊び
- 笑顔が戻るのを待つ
すると、自然と踏み切りが合い始めます。
ここで気づきます。
技術より先に、神経の落ち着きが必要だったのだと。
例 ②:集中出来ない日の対応
発達特性のある子(例:自閉スペクトラム症)が、活動に入れない日。
以前は、「今はその時間だよ」と促していました。
今は、「今日はちょっとしんどい?」と確認します。
隅で少し休み、落ち着いたら戻る。
その子は最後に、「出来た」と小さく言いました。
“全部出来た” わけではない。でも、自分のペースで戻ってこれました。
それが “成果” です。
例 ③:失敗をどう扱うか
ボールを何度も落としてしまう子。
以前なら、「集中して!」「ちゃんと見て!」と言っていたかもしれません。
今の私は、「今、ちょっと焦ったかな?」と言います。
すると、「うん」と返ってきます。

“焦った” と言語化することで、動きが落ち着いてきます。
叱るより、整える。それだけで空気が変わります。
なぜ “安心が先”なのか?
1.神経系の安定が土台
発達心理や神経科学では、学習は “安全な状態” で最も起こりやすいとされています。
情動が安定している時に、前頭前野(思考・判断)が働きやすい。
( Daniel Siegel )
不安や緊張が強いと、
- 体は防御モード
- 思考は狭くなる
- 失敗を恐れる
つまり、正しさを教える前に、安心を整える必要があります。
2.条件づけではなく自己決定
人は、自律性、有能感、関係性、が満たされるとき、内側から動く。
( Edward Deci の理論 )
叱られて動くのは “外発的動機”。
安心の中で動くのは “内発的動機”。

後者のほうが、長く続きます。
3.インクルーシブな視点
「出来るようにさせる」よりも、誰もが参加出来る環境を整えること、が重視される。
( UNESCO の示すインクルーシブ教育 )
つまり、子どもを変えるのではなく、環境を整える。
指導者(大人)の変化は、まさにそこにあるんです。
“叱る” から “支える” へ!
叱ると、
- 一時的に整う
- でも萎縮する
支えると、
- 少し時間がかかる
- でも根が育つ
この違いは、すぐには見えません。
けれど長い目で見ると、挑戦する力に差が出ます。
指導の再定義!
かつての指導:正す、直す、導く。
今の指導:整える、待つ、支える。
これは “甘さ” ではありません。
高度な観察と判断が必要です。
- 今は介入するか?
- 今は待つか?
- どこまで支えるか?

その選択こそ、成熟した指導です。
変わったのは、子どもではなく?
子どもが変わったのではなく、見る目が変わったということ。
“正しさより、安心。成果より、関係。形より、空気” 。
その視点に立つと、子どもは自然に伸びていきます。
“指導=正しく導くこと” から、”指導=安心を整えること” へ。
叱るより、待つ。導くより、支える。
安心の場がある時、子どもは、挑戦し、工夫し、自分の形を見つけます。

変わっていくのは、指導の形です。
でも本質は同じです。
子どもが、安心して自分で育とうとする力を信じること。
“学びを共有する” 、後進への思い
最近では、若い指導者と関わる機会も増えました。
彼らは熱意にあふれ、子どもへの思いも強い。でも時に、同じように悩み、戸惑っています。
「注意しても伝わらないんです」
「この子と、どう関わればいいのか分からなくて…」
そんな声を聞くと、昔の自分を思い出します。
そして私はいつも、こう伝えるようにしています。
「完璧じゃなくていい。ただ、”見ようとする姿勢” を持ち続けてほしい」
私たちが育てているのは、”出来る子ども” ではなく、”生きていく力を持つ子ども”。

それを忘れずにいてほしいと願ってます。
具体例:ある若い指導者との対話
放課後の体育館。
若い指導者が、少し沈んだ表情で話してくれました。
「何度注意しても、ふざけてしまう子がいるんです。どう関わればいいのか分からなくて…」
私は彼と、その場面を一緒に振り返りました。
“その子は、活動が切り替わる瞬間にいつも落ち着かなくなる”。
“注意すると一瞬止まるけれど、また同じ行動を繰り返す”。
そこで私は尋ねました。
「その子は、”出来ない” のかな? それとも、”切り替えが不安” なのかな?」
若い指導者は、少し考えてから言いました。
「…不安なのかもしれません」
具体的な関わりの転換
翌週、彼は少しやり方を変えました。
- 活動が変わる前に、あらかじめ声をかける
- 次に何をするかを、目で見える形で示す
- 注意ではなく、「今、ちょっとそわそわしてるね」と状態を言語化する
すると、その子は少しずつ落ち着いていきました。
劇的な変化ではありません。
でも、確実に空気は変わっていったのです。
若い指導者は言いました。
「注意を減らしたら、関係がよくなった気がします」
何が起きているのか?
発達支援の分野では、
行動を “問題” として捉えるのではなく、”ニーズの表出” として理解する視点が重視されています。
これは、応用行動分析(ABA)や機能的アセスメントの考え方に基づきます。
- ふざける → 注目が欲しい?
- 立ち歩く → 不安や刺激過多?
- 反抗する → 予測出来ないことへの抵抗?

“直す” のではなく、“背景にある困りごとを探ること” が第一歩になります。
2.安心が先にあると学びが動き出す
脳科学の分野では、
情動を司る扁桃体が不安を強く感じている状態では、前頭前野(思考や自己制御を担う部分)が十分に働きにくいことが知られています。

つまり、不安な状態では、学びにくいんです。
逆に、安心感がある時、子どもは挑戦や試行錯誤に向かいやすくなります。
若い指導者が “注意” より “予告” や “言語化” を選んだことで、その子の脳は “防御” から “学習” へと少しずつ切り替わったのです。
3.指導者の姿勢が文化を作る
教育心理学では、指導者の姿勢は “場の文化” を形成すると言われています。
- 正解を急ぐ文化
- 失敗を恐れる文化
- それとも、試していい文化
若い指導者が “見ようとする姿勢” を持ち続けることで、子どもたちは “見てもらえている” と感じます。
その感覚が、自己肯定感と挑戦心の土台になります。
私が後進に伝えたいこと!
私は、若い指導者にこう話します。
- うまくいかなくていい
- 迷っていい
- でも、”見ようとすること” だけは手放さないでほしい

完璧な答えを持つことより、問い続ける姿勢のほうが、子どもを育てます。
もう一つ具体例!
ある新人指導者が、「この子はやる気がない」と悩んでいました。
実際には、その子は、
- 指示が一度に多すぎると混乱する
- 人前で失敗することを極端に怖がる
という特性がありました。
そこで、
- 指示を1つずつに分ける
- 小さな成功を積み重ねる
- 人前では無く個別で練習する時間を作る
そうした工夫をすると、その子は静かに力を伸ばしていきました。
若い指導者は言いました。
「やる気がないんじゃなくて、守っていただけだったんですね」

その気づきこそ、”教える” 以上の学びだったと思います。
私たちが育てているもの?
私たちが育てているのは、
- 出来る子ども
- 失敗しない子ども
- 指示通り動く子ども
ではありません。
育てているのは、自分で考え、迷いながらも進める力。
それは、”正しさ” よりも “安心” から育ちます。
そしてその安心は、まず私たち指導者のまなざしから始まるのだと思います。
地域の中で、安心がめぐる
最近では、教室の外でも保護者や地域の方々と関わることが増えました。
お祭りで顔を合わせた子が、「先生ー!」と笑顔で手を振ってくれる。
その一瞬に、”安心が広がっている” ことを感じます。
教室の中で育った安心は、家庭へ、地域へと静かにめぐっていく。
そんな循環が、子どもたちの未来を少しずつ明るくしていくのだと思ってます。
ある夏祭りの出来事
地域のお祭りで、ひとりの子が遠くから大きく手を振ってくれました。
「先生ー!」
教室では、順番を待つのが苦手で、ときどき不安そうな表情を見せていた子です。
けれどその日は、家族や地域の人に囲まれながら、少し誇らしげな顔をしていました。
私はその瞬間、こう感じました。教室で育った “安心” が、ここまで届いている。
保護者との対話が変えた空気!
ある保護者の方から、こんな相談を受けました。
「家では落ち着かなくて…どうしたらいいでしょう。」
教室では、その子は見通しがあると安定するタイプでした。
そこで私は、
- 活動の流れを紙に書いて冷蔵庫に貼る
- 「あと5分で終わりだよ」と予告する
- 出来たことを具体的に言葉にする
といった方法を共有しました。
数週間後、保護者の方はこう話してくれました。
「怒る回数が減りました。家の空気が少し柔らかくなった気がします」
教室での実践が、家庭へと波紋のように広がった瞬間でした。
安心は “伝播” する!
① 愛着理論(アタッチメント理論)
安心出来る関係性(安全基地)があることで、子どもは外の世界へ探索に向かう。
( 発達心理学者 John Bowlby が提唱した愛着理論 )
教室で “安全基地” となる体験を積んだ子どもは、地域の場でも自分らしく振る舞いやすくなります。

つまり、安心は、行動範囲を広げる力を持つんです。
② 情動の社会的伝染
神経科学や社会心理学では、感情は人から人へと伝わることが知られています。
穏やかな声、受容的なまなざし、失敗しても大丈夫という空気。
それらは、子どもから保護者へ、保護者から地域へと、静かに波及していきます。
これを “情動の伝染” と呼びます。

教室のあたたかさは、目に見えないかたちで地域文化にも影響を与えるんですね。
地域行事で見えた変化!
地域清掃の日。
以前は集団行動が苦手だった子が、ほうきを持ちながら、近所の方にこう言いました。
「ここ、ぼくやります」
その姿を見て、地域の方がこう声をかけました。「頼もしいね!」
教室で育った、
- 待ってもらった経験
- 出来たことを認められた経験
- 仲間と支え合った経験
それらが、地域の中で “役割を引き受ける力” へと変わっていたのです。
生態学的視点?
子どもの発達は、家庭・学校・地域、といった複数の環境が相互に影響し合う中で進む。
( 発達心理学者 Urie Bronfenbrenner )
これを “生態学的システム理論” といいます。

つまり、教室だけが良くても十分ではない、ということです。
けれど、教室から始まる変化は、他の環境を動かす力を持つ。
教室での安心が、家庭の関わりを変え、地域のまなざしを変える。
それは、理論的にも裏づけられているのです。
指導者として出来ること!
地域に安心をめぐらせるために、特別なことは必要ありません。
- 保護者と小さな成功を共有する
- 地域行事に顔を出す
- 子どもの姿を肯定的に語る
その積み重ねが、”この子は大丈夫”、”この子には居場所がある” という共通理解を生みます。
安心の循環!
教室で育った安心は、
子ども → 家庭 → 地域 → そしてまた子どもへと、静かに循環していきます。
その循環が続くとき、子どもは “どこにいても自分でいていい” と感じられる。

それは、学力や技術以上に、未来を照らす土台になるものです。
私たちの仕事は、目の前の一時間を整えることだけではありません。
その一時間が、地域全体の空気を少しやわらかくするかもしれない。
そう思うと、日々の小さな関わりが、とても尊いものに感じられます。
“安心のバトン” を渡していく
私の指導人生も、そろそろ折り返しを過ぎました。
若い頃のような勢いはなくても、今はゆっくりと、ひとつひとつの関わりを味わうようにしています。
私が受け取ってきた安心を、次の世代に渡していく…。
それが、これからの自分の役目だと思ってます。
子どもたちが笑顔で過ごせる時間を少しでも増やすために。

その小さな積み重ねが、未来の “あたたかい社会” につながると信じてます。
ある若手指導者との引き継ぎ
年度末。新しく担当になる若い指導者と、子ども一人ひとりについて話す時間がありました。
私は、出来る・出来ないではなく、こう伝えました。
- 「この子は、始まる前に少し不安になるタイプです」
- 「この子は、名前を呼ばれると安心します」
- 「この子は、見ていないようで、実はよく見ています」
特別な技術ではありません。でもそれは、私が時間をかけて受け取ってきた “安心の情報” でした。
若い指導者は、メモを取りながらこう言いました。「そんな見方があるんですね」
その瞬間、私は感じました。ああ、バトンが渡ったのだと。
関わり方も引き継がれる!
ある子が活動前に立ち止まっていました。
以前の私は、「早くおいで」と声をかけていたかもしれません。
でも今は違います。私は隣に立ち、こう言います。「ちょっとドキドキしてる?」
その様子を、若い指導者がそっと見ていました。
次の週、その若い指導者が同じように声をかけていました。
教えたわけではありません。

でも、”安心を優先する関わり” が自然に受け継がれていたのです。
安心は “文化” として継承される!
① 社会的学習理論
人は、観察を通して学ぶ。
( 心理学者 Albert Bandura )
若い指導者は、私の言葉そのものよりも、姿勢や間の取り方、まなざしを見て学んでいます。
つまり、安心は、行動モデルとして伝わるんです。
② 心理的安全性という概念
失敗や疑問を安心して出せる環境。
( 組織心理学者 Amy Edmondson が提唱した「心理的安全性」 )
これは企業だけでなく、教育現場にも当てはまります。
若い指導者が、
「分からない」と言える。
「悩んでいる」と話せる。
その空気があることで、安心は世代を超えて流れていきます。
③ 安心の内在化
愛着理論の中では、
安心出来る関係を繰り返し経験することで、人は “自分は守られている” という内的モデルを持つとされます。
これは子どもだけでなく、大人にも起こります。
私が先輩から受け取った、
- 失敗しても見守ってもらえた経験
- 迷っても責められなかった経験
それが、今の私の土台になっています。

そして今度は、私がその土台を差し出す番なのだと思っています。
叱らない勇気を見せる!
ある日、若い指導者が迷っていました。「この場面、叱るべきでしたか?」
私は言いました。「あなたは、どう感じた?」
彼は少し考え、「…本当は、怒りたいというより、困っていました」、と答えました。
そこで私は、「その “困っている” を伝えてみたらどうだろう」、とだけ伝えました。
翌日、彼は、「先生、どうしていいか分からなかったよ」と、子どもに伝えたそうです。
すると子どもは、「ごめん」と小さく言ったといいます。

叱るより、正直でいること。それもまた、安心のバトンです。
折り返し地点に立って思うこと?
若いころは、”成果” を追いかけていました。今は、”空気を整えること” を大切にしています。
- 急がない
- 比べない
- 決めつけない
その姿勢そのものが、次の世代へのメッセージになるんだと。
安心のバトンは、目に見えない!
それは賞状にも、記録にも残りません。
けれど、
- 子どもの中に
- 若い指導者の中に
- 地域の空気の中に
確実に残っていきます。

小さな関わりの積み重ねが、やがて “あたたかい社会” の基盤になる。
それは理想論ではなく、発達心理学や組織心理学の視点から見ても、十分に説明できる現象です。
これからの役目!
私の役目は、前に立つことより、後ろから支えること。声を張ることより、静かにうなずくこと。
私が受け取ってきた安心を、ひとつずつ、丁寧に渡していく。
そのバトンが、子どもたちの未来で、また誰かの安心になる。

そう信じながら、今日もまた、ひとつの関わりを味わってます。
おわりに
安心は、技術ではなく文化です。言葉を超えて伝わり、人と人をやさしくつなぐ力があります。
これからも私は、子どもたちの “小さな安心” を見逃さず、その光を次へとつないでいきたいと思います。
今日もまた、教室で子どもたちの笑顔に会える。それだけで、明日もがんばろうと思えるのです。
まとめ
- ✅ 指導とは、”正しく導く” ことから、”安心を整える” ことへ
- ✅ “完璧な答えを持つ” ことより、”問い続ける姿勢” が、子どもを育てる
- ✅ “安心” は、行動範囲を広げる力を持つ
- ✅ “成果” よりも “空気を整えること” を大切にする
次回予告(第2シリーズ 全6回 まとめ版)
これまでの第1〜6回をひとつの物語としてまとめ直した、第2シリーズ完全版をお届けします。
このブログでは、現場での気づきや改善の工夫、子どもたちとの温かいやり取りを通して、”寄り添う指導” のあり方を考えていきます。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。


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