“説明を聞けない子” の本当の理由

生きづらさ

〜 ワーキングメモリの視点から 〜

6〜9分

運動指導の現場では、こんな状況に出会うことが多々あります。

説明をしている最中に、

  • 体を動かし始める
  • 周りを見回す
  • 友達に話しかける
  • 別の方向を向いてしまう

そして説明が終わると、
「今、何をするんだっけ?」と聞いてきます。

その時私たちはつい、「ちゃんと聞いて!」「今、説明してたでしょう!」と言いたくなります。

けれども、もしかするとその子は “聞いてない” のでは無く、”聞き続けることが難しい” のかもしれません。

その背景の一つにあるのが、“ワーキングメモリ” です。


説明を聞くという行為は、実はとても高度な認知活動です。

子どもは同時進行で、

  • 話を聞く
  • 内容を理解する
  • 順番を覚える
  • 体の動きを想像する
  • 周囲の刺激に注意を取られ無いようにする

という多くのことを処理しています。

つまり説明を聞くことは、“耳で聞く” だけではなく、”頭の中で情報を一時的に保持し続ける作業” でもあります。

よっちゃん
よっちゃん

ここで働いているのが、“ワーキングメモリ” です。


ワーキングメモリには容量があります。そしてその容量には個人差があります。
容量が小さいと、説明の場面では次のようなことが起こりやすくなります。

話の途中で情報が消える

説明が長くなると、最初に聞いた内容が頭の中から消えてしまいます。

その結果、

  • 最後の部分しか覚えていない
  • 全体の流れが分からない

ということが起こります。


言葉と動きを同時に処理出来ない

運動指導ではよく、「ヨーイ、ドン!で走って、コーンを回って戻ってきて、次の人にタッチ」のような説明があります。

しかしこの説明は、

  • 条件(ヨーイ、ドンで)
  • 行動①(走る)
  • 行動②(回る)
  • 行動③(戻る)
  • 行動④(タッチ)

という複数の情報を、同時に保持する必要があります。
ワーキングメモリの負荷は、かなり大きくなります。


周囲の刺激で情報が消える

運動指導の現場は刺激が多い環境です。

  • ボール
  • 友達の動き
  • 先生の声

注意が一瞬外れるだけで、頭の中にあった説明が消えてしまうことがあります。


ここで大切なのは、行動の見え方を少し変えることです。
その子は説明を無視しているのでは無く、説明を頭の中に保持し続けることが難しいのかもしれません。


説明は短く区切る

長い説明より、短い指示を重ねる方が理解しやすくなります。
例えば、

①ここに並ぶ
ヨーイ、ドンで走る
③コーンを回る


言葉より “見せる”

動きは、視覚情報の方が理解しやすいです。

  • 指導者のデモンストレーション
  • 上手な子のお手本

これだけで理解が大きく変わります。


一度やってみる

説明のあとに「一回やってみよう」と実践することで、言葉が体験として記憶されます。


説明は “動く前”にもう一度

時間が空くと、ワーキングメモリの情報は消えます。

動く直前の、“短い再確認” が効果的です。


子どもが説明を覚えていない時

それは、

  • やる気が無い
  • 集中して無い

ということでは無く、“頭の中の作業スペースがいっぱいだった” だけかもしれません。


子どもが動けない時、その理由を “態度” では無く “認知の働き” から見てみる。
その視点を持つだけで、指導の言葉や環境は少し変わります。

そしてその変化が、子どもにとっての “分かりやすさ” につながっていきます。


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