『 「ちゃんとして」の裏側で、困っていた子どもたち 』
〜 よっちゃんの ひとことコラム 〜
「ちゃんとして!」
現場でも、家庭でも、つい出てしまう言葉です。
もちろん、大人は困らせようとして言っているわけではありません。
- 周囲に迷惑をかけないように
- 今やるべきことを伝えようとして
- 子どもに成長してほしくて
そんな思いの中で、自然に出てくる言葉なのだと思います。
でも私は、長年子どもたちと関わる中で、
その「ちゃんとして」が分からず、
立ち止まってしまう子どもたちに、たくさん出会ってきました。
ある日、体育館でのことでした。
「ちゃんと並んでね」
そう声をかけると、周囲の子は並び始めました。
でも、一人の男の子だけが動けません。
先生の声が少し強くなります。
「早く!」
けれど、その子はさらに固まっていきました。
後から話を聞くと、その子は、
「どこに並ぶのか分からなかった」のです。
何列なのか。
誰の後ろなのか。
ここで合っているのか。
頭の中で情報が整理できず、不安で動けなくなっていたのでした。
私はこのような場面を、何度も見てきました。
「ちゃんと片づけて」と言われても、
- 何から始めればいいのか分からない子
「落ち着いて」と言われても、
- どうすれば “落ち着いた状態” なのか分からない子
「空気読んで」と言われても、
- 何を見ればいいのか分からず、不安になる子
周囲からは、
- わがまま
- 反抗
- やる気がない
ように見えてしまうことがあります。
でも実際には、
大人を “困らせている” のではなく、”困っている” ことがあるのです。
もちろん、保護者の方も苦しいと思います。
何度言っても伝わらない。
周囲の目も気になる。
時間もない。
気づけば、「ちゃんとして!」という言葉が増えてしまう。
本当は怒りたいわけじゃない。
でも、どう伝えればいいのか分からない。
そんな悩みを抱えながら、毎日向き合っている方も多いのではないでしょうか。
だから私は、「子どもを変える」より先に、
“伝え方を整える” ことが大切なのだと思っています。
例えば、「ちゃんとして」ではなく、
「イスに座ろう」
「先生を見よう」
「赤い線の後ろに並ぼう」
そんなふうに “見える言葉” に変えていく。
すると、不安そうだった子どもの表情が、少しずつ変わることがあります。
以前、縄跳びの練習で止まってしまっていた子がいました。
何度挑戦しても、身体が動かない。
周囲の子はどんどん進んでいきます。
その子は下を向き、今にも泣きそうでした。
そこで、「まず一回またいでみよう」と声をかけました。
すると少しだけ動けました。
次に、「今のタイミング良かったよ」と伝えると、小さくうなずきました。
そして最後に、その子は小さな声で、「…もう一回やる」と言ったのです。
私は今でも、その瞬間を覚えています。
“できた” より先に、「やってみたい」が戻ってきた瞬間だったのかもしれません。
発達特性のある子どもたちは、
「ちゃんとできない子」なのではなく、
“分かり方” や “感じ方” が違うことがあります。
だからこそ、「どうしてできないの?」ではなく、
「どうしたら伝わるかな?」という視点が、安心につながっていくのだと思います。
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