~ 立ち尽くすその子は、”できない” のではなく “不安なだけ” かもしれない 〜
【全6回シリーズ・子どもとの関わり方】 第1期 第3回
「どうしたの?」
「早くしよう!」
言葉には出さなくても、心の中でそう思ったことはありませんか?
授業が始まっているのに、ひとりだけ動けない子ども。
声をかけても反応がない。
目も合わない。
ただ、じっと立ち尽くしている。
周りの子はどんどん進んでいくのに、
その子だけが、取り残されたように見える…。
そのとき、指導者である私たちは、少し焦ります。
「このままでいいのか?」
「何とかしなければ!」
そして、つい “動かそう” としてしまう。
でも今、私はこう思います。
👉 結論:まず必要なのは、”動かすこと” ではなく “安心してもらうこと” だと。
今回の記事では、30年以上の運動指導の現場で見えてきた、
『子どもが自然に動き出すための “安心を届ける5つのサイン”』をお伝えします。
👉 発達特性のある子どもにも、すべての子どもにも共通する大切な視点です。
- 子どもは “動かない” のではなく “動けない”
- 安心できたとき、人は初めて動き出す
- “できたね” は、その瞬間に届ける
- 距離・見通し・伝え方は、すべて “安心” につながる
- 大人(指導者・保護者)の落ち着きが、子どもの “安全基地” になる
▶︎ 今回の記事はシリーズの一部です。全体の考え方をまとめて読みたい方はこちらから👇
▶︎ この記事は、30年以上、4歳児から高齢者まで指導してきた現場経験をもとに書いています。
あの子は、”動かなかった” のではなく “動けなかった”
子どもが立ち尽くしているとき、そこには見えない理由があります。
- 何をすればいいのか分からない → 見通しの不安
- これで合っているのか不安 → 評価の不安
- 周りの音や動きに圧倒されている → 環境の負荷
頭では分かっていても、体がついていかない。
そんな状態です。
👉 つまりそれは、“やる気がない” のではなく “安心できない状態” なのです。
私の指導を変えた、たった一つの出来事
ある日の授業でした。
ウォーミングアップの合図を出すと、子どもたちは一斉に走り出しました。
その中で、ひとりだけ動かない子がいました。
いつもの私なら、声をかけていたと思います。
でもその日は、違う対応をとってみました。
私はすぐには声をかけずに、その子の近くまで行き、少し距離をとって立ち止まりました。
「大丈夫だよ」
そんな気持ちを込めて、ただそばにいました。
そして、やわらかく笑いながら、親指で小さく “OK” のサインを出しました。
ほんの数秒の沈黙。
そのあと、その子の体が、ほんの少し揺れました。
そして、ゆっくりと一歩を踏み出したのです。
その瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
私はそのとき、はっきりと感じました。
👉 子どもは “安心できたとき” に、動き出すのだと。
“安心のサイン” が、子どもを動かす
👉 それから私は、“どう動かすか” ではなく “どう安心してもらうか” を考えるようになりました。

ここからは、現場で何度も助けられてきた、
“安心を届ける5つのサイン” をお伝えします。
なぜ “すぐに” が重要なのか(仕組み)
👉 結論:発達障害の特性のある子は、時間が空くと “何が良かったのか” が、分からなくなるから。
なぜ、”すぐに” が重要なのか?
“良い行動” → “すぐに”「できたね!」= “この行動が正解!”
と脳が理解するからです。
“子どもがほんの少し動いたとき”
その一瞬を、見逃さない。
「動けたね」
「今のいいね!」
その言葉を、“すぐに” 届ける。
たったそれだけで、子どもの表情はふっとゆるみます。
なぜならその一言が、
「これでいいんだ」
「間違っていない」
という “安心” になるからです。
もしこの言葉が遅れたときには、子どもはもう次の不安の中にいます。
▶︎ 関連する内容として、こちらをぜひ、一度読んでみてください。
子どもに対する見え方が大きく変わる内容になっています。
時間が空いた場合
- 子どもが、次の行動に移ってしまう
- 子どもの記憶に、失敗だけが残る
- 子どもの脳に、”どうせ怒られる” が強化される

そのため、正しい行動が定着しにくいんです。
ベストのタイミングは?
- 行動が終わった瞬間!
- もしくは、途中でも成功した瞬間!
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距離は “関わり” そのもの
発達障害の特性のある子どもは、人との距離にも敏感です。
近づきすぎると緊張し、遠すぎると不安になります。
その子にとって “心地よい距離を見つける” ことが重要なんです。
心地よい距離とは何か?
👉 定義として:”見守られている安心” と “侵入されない安全” が “同時に成り立つ距離”。

だと、私は考えています。
私が意識していることは…、
近づくときは、ゆっくりと。
目線を下げて、少し体を斜めに。
離れるときは、そっと一歩。
視線を外して、”見守っているよ” という空気だけを残すこと。
よくある誤解?
❌ 距離を空けること = 無関心
❌ 距離を短くとること = 安心

実際には、距離が近いほど不安な子が多いようです。
大切なこと(重要!)
“近づく → 離れる → また戻る”

その微調整そのものが “指導の質” だと感じています。
👉 “心地よい距離” とは、固定するものではなく、感じて・揺らすものなんです。
“見通し” は、不安をほどく鍵?
👉 結論:”見通し” は、”安心して過ごすための地図” です。
多くの子は、“合っているか分からない状態に、一番不安を感じる” ものです。
「できたね!」をすぐに伝えることで、
- これで終わり
- 間違っていないよ!
すると、脳の理解の速度が早まり、結果的に “安心” できます。

“見通し” は、指示ではありません。
先の見通しは “3点セット” で示す!
- 「今」、何をしているか?
- 「次に」、何があるか?
- 「いつ」、終わるか?
“見通し” があると起きる変化!
- 待てる
- 切り替えられる
- パニックが減る
- 自分で動ける
“違う!” ではなく “こうしてみよう!”
「違うでしょ」
その一言で、子どもは止まります。
でも、「こっちにしてみようか?」
そう伝えると、動き出せる。
この違いは、想像以上に大きいものです。
否定は、“道を消す” 関わり。
提案は、“道をつくる” 関わり。
👉 子どもは、道が見えたときに初めて前に進めます。
子どもにとってのプラス面(行動以外に起きる変化!)
① 不安が減る!
👉 子どもは、否定だけだと “何をすれば正解かが分からない” 状態になります。
次の行動を示すと、
- 正解が一つに絞られる
- 迷いが消える → 心が落ち着く
② 自己否定が育ちにくい!
👉 「ダメ」が続くと “自分がダメ” と感じやすい。
“行動提示” をすると、
- 行動の修正だけ
- 人格を否定しない

このような関わりが、“自尊感情” を守るんです。
③ 成功体験が増える!
否定では “やめる” だけで終わります。
次の行動提示をすることで、“やる” → “できる” →「できたね!」
という “成功ループ” が回ります。
指導者にとってのプラス面(見落とされがち!)
① 叱る回数が減る!
否定は、繰り返し何度も行われます。

具体的な行動提示をすると、1回で済みます。
② 感情が消耗しにくい!
否定は、怒り・焦りの悪循環を呼びます。

行動提示は淡々と伝えられるので、落ち着いて話せます。
③ 指導の手応えが分かる!
“伝えた” → “動いた” という因果が見えやすい。

あなたの指導の軸が、ぶれずに安定します。
関係性におけるプラス面(これが最重要!)
① 指導者= “安全な存在” になる。
否定が多い指導者は、“止める人” あるいは “怒る人” です。
でも、行動提示の指導者は、“教えてくれる人” になります。

この差は、ずいぶん大きいですね!
▶︎ 関連する内容として、こちらもおすすめです。
② 二次障害の予防!
長期的に見ると、“不安障害” や “自己肯定感の低下” を防ぐ効果があります。

あなたも、”安全な存在“ でいてくださいね。
大切なこと!
“否定しない” の目的は、子どもとの関係を保つためではありません。
単純に、優しくすることでもありません。
👉 子どもが、“正確にたどり着ける道” を “短く、分かりやすく” することです。
あなたの “落ち着き” が、子どもの安全基地になる
子どもは、言葉よりも先に、大人の “状態” を感じ取っています。
声のトーン。動きの速さ。
表情のやわらかさ。
そして、変わらないこと。
いつも同じように関わってくれる。感情で変わらない。
👉 それだけで子どもにとっては、“ここにいてもいい!” と思える場所 になります。
私はこれを、“安全基地” だと考えています。
声の落ち着き(最も影響が大!)
⭕️ 具体例
- 音量を一定に保つ
- 語尾を上げない
- 早口にならない
❌ NG例
- 感情で、声のボリュームが上がってしまう
- 同じ言葉で、圧を強めて繰り返してしまう

子どもは言葉の内容より、音の安定を受け取るんです。
▶︎ もしよければ、こちらの記事もきっとヒントになります。
動きの落ち着き!
⭕️ 具体例
- 急に近づかない
- ゆっくり歩く
- 立ち止まってから話す

早い動き = 危険信号!と感じやすい子が多いです。
表情の落ち着き!
⭕️ 具体例
- 眉を寄せない
- 口角をわずかにゆるめる
- 見下ろさない

無表情より “穏やかな表情” が安心につながるんです。
困った時の “型” を持っている!
⭕️ 具体例
- いつも同じ言葉
- いつも同じ距離
- いつも同じ対応

予測出来る指導者 = “安全基地” です。
安全基地になっているときの子どもの変化!
- 近くに来る
- 話しかける
- 失敗を見せる
- 泣いても戻ってくる

これらは、子どもからの信頼のサインなんです。
いちばん大切なこと!
“指導者の落ち着き” とは、何もしないことではありません。
もちろん、感情を抑えることでもありません。
👉 揺れても、戻ってこれる姿を見せることです。
それが子どもにとって “いつでも戻れる場所 = 安全基地” だということです。
変わったのは、子どもではなく “私の関わり方” だった
以前の私は、“どうしたら動くか” ばかり考えていました。
でも今は、“どうしたら安心できるか” を考えています。
すると不思議なことに、子どもが変わったように見えてくるんです。
👉 でも本当は…、
変わったのは、子どもではなく “関わり方” だったんです。
それでも迷ったときは、これだけ思い出してください
もし、現場で迷ったときは…、たった一つでいいので、思い出してみてください。
「この子は、安心できているだろうか?」
👉 この問いがあるだけで、あなたの関わりは、きっと変わります。
おわりに
強く言うより、やさしく待つ。
急かすより、そっと寄り添う。
それは、遠回りに見えて、実は一番、確かな道です。
子どもは、とても敏感です。
そして、とても正直です。
だからこそ、私たちが届ける “安心“ に、ちゃんと応えてくれます。
まとめ
- ✔︎ 子どもは “動かない” のではなく “動けない”
- ✔︎ 安心できたとき、人は初めて動き出す
- ✔︎ “できたね” は、その瞬間に届ける
- ✔︎ 距離・見通し・伝え方は、すべて “安心” につながる
- ✔︎ 大人(指導者・保護者)の落ち着きが、子どもの “安全基地” になる
この続きは、次の記事でさらに深くお伝えします。
次回(第4回)は、
“大人同士のつながりが、子どもの安心をどう育てるのか?” についてお話しします。
子どもを支えるのは、一人の大人ではなく “みんなの力” です。
▶︎ ここまで読んでくださった方には、ぜひ、次の記事も読んでいただきたいです。
▶︎ 今回の記事のコラムも、ぜひ、あわせて読んでみてください。
今回の内容が、子どもとの関わり方に悩んでいる先生方や若いコーチの方、
また、保護者のみなさんにも、”ほっとする” 温かいヒントになればと思っています。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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