『 なぜ子どもはブランコを怖がるの?「怖い」には理由がある 』
〜 見え方がかなり変わる (5)〜
「ブランコに乗ろう!」と誘うと、怖がって逃げてしまう。
ところが、その一方で、
- 「もっと回して!」
- 「もう一回!」
と、何度も何度も身体を動かしたがる子もいます。
同じ運動遊びの場にいるのに、反応はまったく違います。
- 「どうして、この子はブランコが怖いんだろう…?」
- 「なぜ、この子はこんなに回り続けるんだろう…?」
- 「落ち着きがないのかな…?」

そんなふうに思ったことはありませんか?
でも、もしその違いの背景に、身体が受け取る “感覚の違い” があったとしたら?
私たちの身体には、
- 目で見る
- 耳で聞く
- 触れる
といった感覚だけでなく、
- 身体の動き
- 身体の傾き
- 筋肉の動き
- 関節の動き
などを感じ取るさまざまな仕組みがあります。

そして、身体に入ってきたたくさんの情報を受け取り、整理して、
行動につなげていくことを『感覚処理』といいます。
同じブランコに乗っても、「怖い!」と感じる子もいれば、「もっと乗りたい!」と感じる子もいます。
それは、単なる「怖がり」や「落ち着きのなさ」だけでは説明できないときがあります。
👉 結論:発達特性のある子どもは、”感覚を強く受け取りやすかったり”
反対に、”身体を動かす刺激をもっと求めたりすること” がある。
もちろん、すべての行動を『感覚処理』で説明できるわけではありません。

だからこそ大切なのは、「この子は、今、何を感じているんだろう?」
と、その行動の背景を考えてみること。
ブランコが怖いなら、無理に乗せるのではなく、安心できるところから始める。
何度も回り続けるなら、ただ「やめなさい」と止めるのではなく、安全に動ける方法を考える。
体育館の音や光、人の多さが負担になっているなら、環境を少し整えてみる。
ほんの少し条件を変えるだけで、子どもの表情や動きが変わります。
この記事では、ブランコを怖がる子、回り続ける子など、子どもの身近な行動を入り口に、
👉 発達特性と感覚処理の関係、
そして子どもが安心して身体を動かすための環境づくりについて考えていきます。
▶︎ 人は、何歳になっても学び直せます。
私は30年以上現場で指導していますが、子どもに対する見方を間違えていた時期がありました。
「怖い!」の理由
身体が浮く感じが怖い
ブランコに乗ると、
- 身体が前後に動きます
- 足元が地面から離れます
- 身体が傾きます
- 視界も動きます
そして、身体の中では
「今、自分はどのくらい動いているのか」という情報を受け取っています。
私たちは普段、こうした感覚をほとんど意識せずに処理しています。

だから、「ブランコくらい、乗れば慣れるよ」と思ってしまうことがあります。
揺れる・速く動くことが不安
でも、子どもによっては、
- 揺れるのが怖い
- 速く動くことが怖い
- 足が地面につかないことが不安
- 視界が動くことで気持ち悪くなる
など、さまざまな理由でブランコを怖く感じることがあります。

これは単純に、「怖がりだから…」とは言い切れません。
その子にとって、身体に入ってくる感覚が
- 大きすぎる
- 予測しにくい
と感じている可能性があります。
私たちの身体には、たくさんの『感覚』がある
『感覚』というと、
- 目で見る
- 耳で聞く
- 手で触る
といったものを思い浮かべるかもしれません。もちろん、それも “大切な感覚” です。
でも、身体を動かすときには、それ以外にも “さまざまな感覚” が働いています。
たとえば…、
⚫️ 視覚|目から入ってくる情報
- ボールがどこにあるか?
- 人がどこにいるか?
- どちらへ動けばいいか?

などを知るために使います。
⚫️ 聴覚|音から周囲の状況を知る
- 先生の声
- 音楽
- 笛の音
- 周囲の子どもたちの声

なども情報になります。
⚫️ 触覚|身体に触れたものを感じる
- マット
- ボール
- 人との接触
- 衣服など

日常のさまざまな場面で働いています。
⚫️ 前庭感覚|身体の傾きや動き、加速・減速などに関係
- ブランコ
- 回転
- ジャンプ
- 滑り台など

身体が大きく動く遊びと深く関係しています。
⚫️ 固有感覚|筋肉や関節などから、どう動いているのかを感じる
- どのくらい力を入れるか?
- 腕や足がどこにあるか?

など、運動するときに重要な役割を果たします。
👉 私たちは、こうしたさまざまな感覚から得た情報を組み合わせながら、
「今、自分の身体はどうなっているのか」を理解し、動いています。
『感覚処理』とは
身体に入る情報を整理する力

ここで大切になるのが、『感覚処理』という考え方です。
👉 簡単に言えば、身体に入ってきた
さまざまな感覚の情報を受け取り、整理し、行動につなげていくこと。
たとえば、体育館で笛が鳴ったとします。
- 耳には笛の音
- 目には周囲の子どもたち
- 足には床の感触
- 身体には自分が走っている感覚
- 先生からは、「止まって!」という声
私たちは、これらを同時に受け取りながら、「止まる」という行動につなげています。
でも、入ってくる情報の受け取り方や整理の仕方には、一人ひとり違いがあります。

そのため、同じ環境にいても、
「ちょうどいい」と感じる子と、「刺激が強すぎる!」と感じる子がいるんです。
“ブランコが怖い子” の原因は、一つとは限らない
たとえば、ブランコに乗るのを嫌がる子。
- 「大丈夫だよ」
- 「怖くないよ」
- 「みんな乗ってるよ」
と声をかけても、なかなか乗れないことがあります。

そんなとき、「怖がりだから…」と決めつけるのではなく、
「この子にとって、何が怖いのだろう?」と考えてみます。
- 揺れること?
- 身体が浮くこと?
- スピード?
- 視界が動くこと?
- 自分で止められないこと?
それとも、「次にどう動くのか分からない」という予測のできなさ?
👉 原因は一つとは限りません。
だから、「怖くないから乗ってみよう」ではなく、
- 「先生と一緒に、少しだけ揺れてみようか」
- 「足がつく高さからやってみよう」
- 「今日は見るだけでもいいよ」
と、その子が安心できるところから始めます。
▶︎ もし今、同じように悩んでいるなら、こちらの記事もきっと参考になります。
“回り続ける子” は、刺激を求めている場合がある
一方で、回転する遊びが大好きな子もいます。
- くるくる回る
- ジャンプする
- 身体を揺らす
- 何度も滑る
- トランポリンを繰り返す
「もうやめよう」と言っても、またやりたがる。
そんな姿を見ると、
- 「落ち着きがないのかな…?」
- 「遊びをやめられないのかな…?」
と思うこともあります。もちろん、その理由は一人ひとり違います。

でも、もしかするとその子は、
身体を動かしたときに得られる感覚を、もっと求めているのかもしれません。
- 「もっと刺激がほしい」
- 「身体を動かす感覚が心地いい」
- 「動いているほうが落ち着く」
ということもあります。
👉 つまり、「怖くて避ける子」と「刺激を求めて動く子」は、
正反対に見えても、どちらも感覚の受け取り方に特徴があるんです。
▶︎ 「どう関わればいいのか分からない…」そう感じている方は、まずこちらを読んでみてください。
「落ち着いて!」と言う前に、「どうしたら落ち着ける?」を考える
ただ動きを止めるだけでは、うまくいかないことがあります
運動指導の現場では、
- 「じっとして」
- 「落ち着いて」
- 「もうやめよう」
と言いたくなる場面があります。

でも、その子にとって身体を動かすことが、
自分を落ち着かせるための一つの方法になっているとしたら…。
そのようなときは、
- 始まる前に少し身体を動かす
- ジャンプを何回かしてから話を聞く
- 活動の合間に身体を動かす時間をつくる
- 回転遊びのあとに静かな活動を入れる
など、活動の順番や環境を工夫することです。
👉 大切なのは、「その行動をなくす」だけを目標にしないこと。
その行動の背景にある、「この子は何を感じているのだろう?」を考えることです。
▶︎ 少し視点は変わりますが、こちらの記事もヒントになります。
体育館では、必要のない刺激を減らす
運動指導の現場には、たくさんの刺激があります。
- 大きな声
- 笛の音
- 音楽
- 走り回る子どもたち
- ボールが床に当たる音
- 体育館の反響
- まぶしい照明
- たくさんの道具
- 人との距離
- 待っている時間
大人にとっては「いつもの体育館」でも、
子どもによっては情報が多すぎる場所になっていることがあります。
👉 特に、感覚を強く受け取りやすい子の場合、
「先生の話を聞いて」と言われても、その前にたくさんの情報が入ってきています。

だから私は、
必要のない音や物を減らすことも、指導の一つだと考えています。
- 使わない道具は見えない場所に置く
- 説明するときは音楽を止める
- 一度に話す人数を減らす
- 待つ場所を決める
- 活動の順番を見えるようにする
👉 こうした環境づくりによって、子どもが受け取る情報量を調整します。
▶︎ 関連する内容として、こちらもおすすめです。
“安心してできる” 環境をつくる
子どもが苦手としている活動を見ると、
「何度もやれば慣れるよ」と言いたくなることがあります。

確かに、経験によって慣れていくことはあります。
でも、苦手な刺激を繰り返し与えれば、必ず慣れるとは限りません。
むしろ、
- 怖い
- 嫌だ
- 気持ち悪い
- 苦しい
そんな経験が積み重なれば、「運動=嫌なもの」になってしまうんです。
だからこそ、「少しだけなら大丈夫」と思えるところから始める。
- 「今日は見るだけ」でもいい
- 「先生と一緒ならできる」でもいい
- 「自分で止められる」方法を用意する
👉 そして、「できたから次へ進む」のではなく、
「安心できたから、次に進める」という考え方も大切なのだと考えます。
▶︎ 具体的な声かけや関わり方を知りたい方は、こちらの記事がすぐに現場で役立ちます。
感覚の違いは “わがまま” ?
“わがまま” と決めつけるのではなく、観察する
子どもが、
- 「この音は嫌」
- 「触られるのが嫌」
- 「ブランコは乗りたくない」
- 「もっと回りたい」
と言ったとき、大人からすると、
- 「そんなに嫌がらなくても」
- 「もう十分でしょう」
と思うことがあります。
👉 でも、その子にとっては、本当に強く感じているのかもしれません。
逆に、何度も身体を動かしている子も、「言うことを聞かない」のではなく、
自分にとって心地よい感覚を求めている可能性があります。

もちろん、すべての行動を『感覚の問題』と考える必要はありません。
その行動には、他の理由が考えられるときもあります。
そこで、
- 「いつ起きるのか?」
- 「どんな場所で起きるのか?」
- 「何をすると落ち着くのか?」
- 「何をすると嫌がるのか?」
を見ていくことが大切なんです。
▶︎ 実際の現場で何度も感じてきたことを、こちらの記事にまとめています。
「この子は何を感じているんだろう?」から始める

運動指導で大切なのは、子どもの行動をすぐに変えることではありません。
その行動の背景を考えることです。
- ブランコを怖がる
- 回り続ける
- 耳をふさぐ
- 身体を強く押しつける
- 何度もジャンプする
- 人との接触を嫌がる
逆に、身体をぶつけるような遊びを好む。

こうした姿を見たとき “困った行動” と名前をつける前に、
「この子は、今、何を感じているんだろう?」と考えてみること。
すると、
- 「怖いから避けているのかもしれない…」
- 「刺激を求めているのかもしれない…」
- 「情報が多すぎて困っているのかもしれない…」
- 「自分を落ち着かせるために動いているのかもしれない…」
という、別の見方が生まれます。
▶︎ 同じような場面で悩んできた中で見えてきたことを、こちらで詳しく書いています。
見方が変われば、指導も変わる

私は、運動指導で一番大切なのは、
その子が安心して身体を動かせることだと考えています。
- ブランコが怖いなら、無理に乗せない
- 回りたいなら、ただ止めるのではなく、安全に動ける方法を考える
- 刺激が多いなら、環境を整理する
- 説明が入りにくいなら、伝える情報を減らす
👉 そして、「今日はここまでできたね」と、その子の変化を見ること。
運動は、「できるようになったか」だけが成長ではありません。
- 「今日は怖がらずに近づけた」
- 「先生と一緒なら少し揺れられた」
- 「自分からもう一回やってみたいと言えた」
それも大切な一歩なんです。
「この子、急に変わった!」の前にあるもの
小さな安心の積み重ね
運動指導をしていると、
- 「前はブランコを嫌がっていたのに、今日は乗れた」
- 「いつも動き回っていた子が、今日は落ち着いて話を聞けた」
そんな変化に出会うことがあります。「急に変わった」ように見えるかもしれません。
でも、その前には、
- 安心できる場所ができた
- 先生との関係ができた
- 刺激を減らした
- 自分で選べるようになった
- 少しずつ経験を積んだ
そんな時間があったんです。
安心できるところで少しずつ経験する
怖がっていた子が、ある日、自分からブランコに近づいていくことがあります。
何度も回っていた子が、安心できる場所を見つけて、落ち着いて活動できることもあります。
👉 「この子、変わったな」と感じるその瞬間の前には、
本人にも見えない小さな準備が、積み重なっていたんです。

子どもが変わったというより、
「その子が力を発揮できる条件が整った」んですね。
おわりに
ブランコに乗ることを怖がる子がいます。
一方で、何度も何度も回り続けたり、身体を動かし続けたりする子もいます。
私たちは、つい、
- 「怖がりなのかな?」
- 「落ち着きがないのかな?」
- 「もう少し慣れればできるのに…」
と、その行動だけを見てしまうことがあります。

でも、その子の中では、私たちには見えていない『感じ方』があるんです。
- 揺れることが怖い
- 身体が浮く感じが不安
- 周りの景色が動くことが苦手
- 反対に、もっと身体を動かすことで心地よさを感じている
同じブランコでも、感じ方は一人ひとり違います。
だからこそ、指導者にできることは、無理に「できるようにする」ことではないのだと思います。
👉「どうしてできないんだろう?」というその問いを、
「この子は、今、何を感じているんだろう?」に変えてみる。

そして、「どうしたら、この子が安心して身体を動かせるだろう?」と考えてみる。
そこから、声のかけ方が変わり、環境の整え方が変わり、子どもとの関わり方も
少しずつ変わっていきます。
👉 子どもを変えようとする前に、まず “その子が安心できる条件” を探してみる。

それは、運動指導だけではなく、子どもを育て、
支えるすべての場面につながる大切な視点だと、私は思っています。
👉「怖い」も「もっと動きたい」も、その子からの大切なサイン。
そのサインに気づくことから、子どもが安心して身体を動かせる場所が始まります。
この続きは、次の記事でさらに深くお伝えします。
次回は、
“運動嫌いはどこで生まれるのか?。子どもの失敗経験と「やりたくない」の理由” をお話しします。
子どもが “運動嫌い” になるのは、運動そのものが嫌だからとは限りません。
失敗経験が積み重なり、「どうせできない」「やりたくない」と感じることも。
ここを知ることで、あなたの指導の見え方もかなり深くなります。
😊 最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
▶︎ ここまで読んでくださった方には、ぜひ次の記事も読んでいただきたいです。
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