第2シリーズ 第5回
こんにちは、よっちゃんです。
私は30年以上にわたり、4歳児から高齢の方々に対して、運動の楽しさや体を動かす大切さを伝えています。
子どもたちと接していると、一人ひとりの中にある “違い” が、自然と見えてきます。
走るのが得意な子。
話すのが好きな子。
動き出すまでに少し時間がかかる子。
そのすべてが “教室の色” になっています。
でも、時にはその違いがぶつかり合い、小さなトラブルになることもあります。
そんなとき、あなたはどうしてますか?
私はいつも心の中で、こうつぶやきます。
「今は、関係を学んでいる時間なんだ」と。
そこで今回は、『子ども同士の安心・仲間づくりの支援』(超重要!)3選 を、お伝えします。
- “待つこと” は、関係を育てる教育につながる
- 答えを教えない “勇気を持つ” ことで、子どもは学ぶ
- 支え合うとは、相手を “尊重” すること
- あたたかさは、教えるものではなく “醸成” されるもの
それでは、具体的な経験談をお話しします。
小さな衝突から生まれた気づき
ある日、チームでボール遊びをしていた時のことです。
発達特性のある子が、仲間の順番を抜かしてしまいました。
すぐに他の子が「ズルい!」と怒り、空気がピリッとしました。
昔の私なら、すぐに注意して、順番を戻させていたでしょう。
でもその日は、少しだけ待ってみました。
その間に、隣の子がぽつりと一言。
「○○さんは、早くボールやりたかったんだよね?」
その声に、順番を抜かした子が小さくうなずき、「うん…ごめん」とつぶやきました。
その瞬間、場の空気がやわらかくなりました。
私は思いました。
「子ども同士で、ちゃんと理解し合う力があるんだ」と。
場面を分解してみる!
起きた出来事
- 発達特性のある子が順番を抜かす
- 他の子が「ズルい!」と怒る
- 空気が緊張する
ここまでは、どの現場でも起こり得ます。

重要なのは、その後です!
もしも、即座に介入していたら
「順番守ろうね」
「戻りなさい」
秩序は守られます。
しかし、
- 理由は共有されない
- 感情は置き去り
- 子ども同士の理解は育たない
という可能性があります。
実際に起きたこと
- 指導者が “少し待った”
- 隣の子が意図を推測した
- 当事者がうなずいた
- 自発的に「ごめん」と言った

これは、”外的統制ではなく、内的調整” です。
なぜこの瞬間が価値あるのか?
1.社会的学習理論
子どもは他者の行動を観察し、模倣し、学ぶ。
( Albert Bandura )
この場面では、
- 「ズルい!」と怒った子
- 「早くやりたかったんだよね?」と推測した子
両方の行動が、学びの材料になります。
特に後者は、“共感的解釈モデル” を提示しました。
それを周囲の子どもも見ています。
2.心の理論
発達特性のある子ども(例:自閉スペクトラム症)は、他者の気持ちを推測することが難しい場合があります。
しかしこの場面では、周囲の子が代わりに、「こういう気持ちだったのでは?」と翻訳しました。
これは、“仲間による社会的足場かけ” です。

本来大人が行う支援を、子どもが担った瞬間です。
『 自閉スペクトラム症(ASD)とは? 』
https://www.yocchanblog.com/asd/
3.足場かけ理論
発達は「最近接発達領域(ZPD)」の中で起きる。
( Lev Vygotsky )
つまり、少し難しいけれど、他者の支えがあれば届く領域。
この場面では、
- 順番を守る
- 理由を言葉にする
- 謝る
という一連の行動が、仲間の一言によって可能になりました。
“待つ” という意味?
1.自己調整の育成
すぐに大人が修正すると、子どもは、
- “怒られない行動を学ぶだけ” になります。

指導する側にとって、重要な意識です。
しかし、少し “待つ” ことで、
- 自分で気づく
- 仲間と調整する
- 自分の言葉で謝る
という “自己調整能力” が育ちます。
『 自分で見つける安心 』
https://www.yocchanblog.com/daigo/
2.修復経験
関係には必ず “衝突” が起きます。大切なのは、”修復” を経験すること。
このとき、
- 子ども同士で修復が起きた
- 強制ではなく、自発だった
だからこそ、場の空気がやわらいだのです。
3.集団の成熟
実は、この出来事で一番育ったのは “順番を抜かした子” だけではありません。
- 怒りを表現した子
- 理由を推測した子
- 空気を感じ取った子

“全員が、対話的集団へ一歩進んだのです”!
指導者がしたことは?
“何もしなかった” のではありません。
- 安全が保たれているか見守る
- 感情が暴走しない範囲を判断する
- 介入のタイミングを見極める
これは高度な専門性です。

“待つこと” は、放任することではありません。
実践で活かせる視点!
小さな衝突が起きたとき、
自分に問いかけてみる:
- 今すぐ止める必要があるか?
- 子ども同士で言葉が出そうか?
- 修復の芽はあるか?
そして、修復が起きたら、
- 「今、いいやり取りだったね」
と価値づける
それが次の学びを強化します。
秩序は、注意すれば守れます。
でも、理解は、対話からしか生まれません。
あの日の出来事は、”順番を守る指導” ではなく、“関係を育てる教育” でした。
そして私は、子どもたちの力を信じて一歩引きました。
この勇気が、集団を一段成熟させたのです。

あなたもこの勇気を持ってくださいね。
“教える” より “気づかせてもらう”
私は、子どもたちのやり取りの中に、たくさんの “気づきの種” があると感じています。
私たち大人が入る前に、子どもたちが自分たちなりに考えたり、受け入れたりしている。
その姿は、本当にたくましいです。
指導者としての役目は、正すことより、見守ること。
必要なときだけ、そっと背中を押すこと。

子ども同士の関係を “育てる” には、まず、大人が “待つ” 勇気を持つことなんですね。
“教えなかった” ことで起きたこと!
例 ①:ルールの解釈を子どもが調整した場面
ドッジボールの試合中に、ボールがライン上に落ちました。
「アウトでしょ!」
「いや、セーフじゃない?」
空気がざわつきます。昔の私だったら、すぐに判断していました。
でもその日は、少し待ちました。
すると、一人の子が言いました。
「じゃあ、もう一回やればいいんじゃない?」
全員がうなずき、自然に再開。
ここで育ったのは、
- 勝ち負けの厳密さ
では無く、 - 合意形成の力
でした。
例 ②:発達特性のある子への自然な配慮
発達特性のある子(例:自閉スペクトラム症)が、授業の説明中に動き出してしまいました。
周囲がざわつきかけたとき、隣の子が小さく言いました。
「○○さんは、聞きながら歩くんだよ」
その子は戻り、場は崩れませんでした。私は何も言ってません。
でも、子どもたちの中には、すでに理解の芽が育っていたのです。
例 ③:謝り方を “教えなかった” 場面
トラブル後、「ごめんねはしたの?」と、私はあえて聞きませんでした。
しばらく沈黙があり、やがて当事者がぽつりと、「さっきは嫌だった?」
相手がうなずく。
「ごめん」
これは、命令された謝罪ではなく、関係を回復する言葉でした。
なぜ “教えない” ことが育てるのか?
1.最近接発達領域(ZPD)
子どもは、少し難しい課題を、他者との関わりの中で乗り越える。
( Lev Vygotsky )
大人がすぐに答えを出すと、子どもは “正解” を学びます。
でも、少し待つと、子どもは “考え方” を学びます。

この違いは、大きいですね。
2.内発的動機づけ
人は “自律性、有能感、関係性” が満たされると成長する。
( Edward Deci と Richard Ryan の自己決定理論 )
すぐに介入すると、自律性が奪われることがあります。
待つことで、”自分たちで解決した” という有能感が生まれます。
3.修復経験の重要性
心理学では、
“衝突” そのものよりも、”修復の経験” が関係を強くすると言われます。
大人が介入すると修復は “外側” から起きます。
子ども同士で起きると、修復は “内側” から育ちます。

この差も、長期的に大きいです。
“教える人” から “環境を整える人” へ!
教育観の転換があります。
- 教える人
では無く、 - 学びが起きる環境をつくる人
大人は前に立つのではなく、一歩引いて整える。
( Maria Montessori が語った姿勢 )
“教える” は、答えを渡すこと。
“気づかせてもらう” は、可能性を信じること。
子ども同士の関係を育てるには、まず大人が、
- 正したくなる衝動を抑え
- 少し待ち
- 子どもの力を信じる
“勇気を持つこと” です。
そして気づくのです。
“育っているのは、子どもだけではなく、私たち大人もまた、育てられているのだ” と。
“助ける” ではなく “支え合う” 関係へ
ときどき、他の子が特性のある子に対して、”お世話をしてあげる” ような関わりを見せることがあります。
その気持ちは優しいのですが、私は「ありがとう、でも○○さんも自分でやってみたいかもね」と伝えます。
助けることよりも、“相手を尊重する関わり” を大事にしたい。
お互いのペースを尊重する空気が出来ると、自然と笑顔が増えていきます。
子どもたちは “出来る、出来ない” では無く、”つながっている” ことの安心を求めているのだと思います。
やさしさの中にある “上下”
例 ①:靴を履かせてあげる場面
発達特性のある子(例:自閉スペクトラム症)が、靴ひもを結ぶのに時間がかかっています。
隣の子がさっと来て、「やってあげる!」
その子の表情は少し複雑。

ここで大人が言う一言は?あなただったらどう言いますか?
私の場合は、
「ありがとう。でも○○さんは、自分でやってみたいかもね」
そして当事者に、
「どうする?手伝ってほしい?」
と選択を渡す。
すると、「じぶんでやる」
時間はかかるけれど、最後は少し誇らしげな顔をしてます。
ここで守られたもの
- 自律性
- 自己効力感
- 対等な関係性
例 ②:”お世話係” になってしまう子
クラスで自然と、
- 支援する子
- 支援される子
という構図が固定化していくことがあります。優しさが、役割の固定につながることもある。
そんなとき私は、
「今日は○○さんが教えてくれたね。今度は△△さんの得意なこと、みんなに教えてもらおうか」
と役割を循環させます。
すると、“助ける側” も “助けられる側” も固定されません。
例 ③:出来ないことより “つながり” を価値づける
ゲームでうまくいかなかった子がいます。
誰かが言います。
「いいよ、ぼくが代わりにやる」
私は言います。
「代わりにやるより、一緒に考えてみようか」
その瞬間、上下ではなく、横並びの関係になります。
なぜ “助ける” だけでは足りないのか?
1.自己決定理論
人が成長するためには “自律性、有能感、関係性” の、この3つが必要。
( Edward Deci と Richard Ryan の自己決定理論 )
“助けられすぎる” と、有能感が育ちにくくなります。一方で、”孤立させる” と関係性が失われます。

だからこそ必要なのが、“支え合い” です。
2.対等性とインクルージョン
インクルーシブ教育の考え方では、
子どもを “支援の対象” としてではなく、“集団の一員として尊重すること” が基本です。
包摂(インクルージョン)とは、 “共に学ぶこと” である。
( UNESCO )
一方的な援助は無意識のうちに、
- 優劣
- 上下
を作る可能性があります。
3.相互依存の心理学
人は、”誰かの役に立てる” と感じたときにも自己価値が高まります。
つまり、発達特性のある子もまた、誰かを支える側になれる存在です。
例えば、
- ルールを正確に覚えている
- 細かい違いに気づく
- 一途に取り組める

こうした特性は、集団の強みになるんです。
支え合いとは、お互いの強みが循環する状態です。
“つながっている” ことの安心!
子どもたちが求めているのは、
“出来る、出来ない” の評価ではなく、”自分はこの場にいていい” という感覚です。
心理学ではこれを “所属感” と呼びます。
所属感があると、
- 挑戦できる
- 失敗できる
- 再挑戦できる
だから笑顔が増えるのです。
指導者の役目!
指導者(大人)がするのは、助けることを止めることではありません。
- 過度な援助を調整する
- 尊重の言葉を添える
- 役割を循環させる

つまり、”関係のバランスを整えている” んです。
それは高度な観察と感性が必要な仕事です。
実践で使える言葉!
- 「どうする?手伝ってほしい?」
- 「一緒にやってみる?」
- 「今度は○○さんの番だね」
- 「それぞれのやり方があるね」
- 「ありがとう。でもまずは本人に聞いてみよう」
“助ける” は優しさ。でも、”支え合う” は尊重。
支え合う関係が育つと、
- 上下がなくなり
- 役割が固定されず
- 安心が循環します
そして子どもたちは、“出来る人” になるのではなく、”つながれる人” へと育っていきます。
教室の “あたたかさ” は、みんなでつくる
最近では、子どもたち同士の間に、自然な思いやりが育ってきました。
転んだ子がいれば、「大丈夫?」と手を伸ばす。
順番を待つのが苦手な子がいれば、「次、一緒にやろう」と声をかける。
そんな場面を見るたびに、胸の奥がじんと温かくなります。
安心は、教えるものではなく、みんなで “育てる” ものなんですね。
あたたかさが見える瞬間!
例 ①:転んだ子に自然と手が伸びる
鬼ごっこ中、ひとりが転びました。
以前なら、笑いが起きたり、指導者が駆け寄ったりしていたかもしれません。
でも最近は違います。
近くの子が、すっとしゃがみ、「大丈夫?」
その子はうなずき、また走り出す。
私は、ほとんど何もしてません。
でも、場の空気はやわらかいんです。
例 ②:順番が苦手な子への声かけ
発達特性のある子(例:自閉スペクトラム症)が、順番待ちでそわそわしています。
すると、隣の子が言います。
「次、一緒にやろう」
その一言で、焦りがほどけていきます。

これは “指導” ではなく、もう “文化” ですね。
例 ③:失敗した子への空気
シュートを外した子に、誰かが言います。
「ドンマイ!」
でもそれは、からかいではなく、自然な励まし。
その子も笑って戻る。
ここには、”失敗しても大丈夫” という共有された前提があります。
なぜ “あたたかさ”は育つのか?
1.情動は伝染する
感情は集団内で伝播する。
( Daniel Goleman )
指導者が、
- 急がない
- 否定しない
- 受け止める
このような姿勢を取り続けると、その情動は子ども同士にも広がります。
あたたかさは、模倣されるんです。
2.心理的安全性
組織心理学では、
安心して発言、失敗できる環境を “心理的安全性” と呼びます。
これは大人の職場だけでなく、子どもの集団にも当てはまります。
心理的安全性があると、
- 助けを求められる
- 助けを差し出せる
- 失敗を恐れない

だから、思いやりが自然に生まれます。
3.観察学習と共感の発達
子どもは、モデルを観察して学ぶ。
( Albert Bandura の社会的学習理論 )
指導者が、
- 待ち
- 聞き
- 尊重
これらを実行してきた姿は、そのまま子どもたちの行動モデルになっています。
さらに、発達研究では共感性は経験の中で育つとされます。
誰かに受け止められた経験がある子は、他者を受け止めやすいんです。
あたたかさは “結果” である!
重要なのは、あたたかさは目標として教えるものでは無いということ。
「やさしくしなさい」と言っても、文化にはなりません。
でも、
- 待つ
- 尊重する
- 支え合う
こんな関係を積み重ねると、ある日ふと、子ども同士が自然に動く。
それが “育った” 証です。
集団はひとつの生き物!
集団は、相互作用するシステムである。
( Murray Bowen の理論 )
ひとりが安心すると、周囲も安定しやすい。
そして、安心が増えるほど、助け合いが自然になります。

つまり、あたたかさは個人の性格ではなく、“関係の構造” から生まれるんです。
指導者がしていること!
指導者(大人)が育てているのは、技術でも、規律でもなく、“空気” です。
- 失敗してもいい空気
- 助けを求めていい空気
- 違いがあっていい空気
その空気が、子どもたちを自然に動かします。
安心は、教えるものではない。
安心は、
- 待つことで
- 尊重することで
- 支え合うことで
少しずつ醸成されるもの。
そしてある日、子どもたちの「大丈夫?」「一緒にやろう」という声の中に、それが形になる。
教室のあたたかさは、指導者が作るのではなく、みんなで育てる文化。

今からあなたも、”指導” を超えて “文化” 作りを目指してください。
おわりに
子どもたちの間に生まれる “やさしさ” は、大人が作る空気の中で育ちます。
急がせず、比べず、それぞれのペースで認め合うこと。
“仲間がいる”
それだけで、子どもは大きく変わります。
私も、そんな “あたたかい教室” の一員でありたいと思ってます。
まとめ
- ✅ 指導者が “待つこと” で、関係を育てる教育につながる
- ✅ 答えを教えない “勇気” を指導者が持つことで、子どもは学ぶ
- ✅ “支え合う” 関係とは、相手を “尊重” する関わりのこと
- ✅ あたたかさは、教えるものではなく、少しずつ “醸成” されるもの
次回予告(第6回・最終回)
“安心を未来へ・学びを広げる、つないでいく”。子どもたちとの日々を通して得た気づきを、これからの指導者や地域にどう広げていくのか。シリーズを締めくくる “未来へのまなざし” をお届けします。
このブログでは、現場での気づきや改善の工夫、子どもたちとの温かいやり取りを通して、”寄り添う指導” のあり方を考えていきます。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。


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