『 「どうして?」と問い続けていた私が、「そうだったんだ」と思えるようになるまで 』
〜 よっちゃんの ひとことコラム 〜
子どもを変える前に、安心できる場所をつくるということ
「どうして、できないんだろう?」
以前の私は、子どもの姿を見ながら、そう考えることがありました。
「どうして並べないんだろう…?」
「どうして話を聞けないんだろう…?」
「どうして急な変更を嫌がるんだろう…?」
「どうして、みんなができていることができないんだろう…?」
指導する立場にいると、
「できるようにしてあげたい」という気持ちがあります。
だからこそ、
「もう少し頑張ればできる」
「もう一度言えば分かる」
「できるまで練習すればいい」
と考えてしまうこともありました。
でも、長く子どもたちと関わってきた中で、少しずつ分かってきたことがあります。
それは、
子どもが動けないとき、必ずしも「やる気がない」わけではない、
ということです。
確信したのは、
動き出せないほど、不安なんだ、ということでした。
「早くして」と言った私が、子どもを止めてしまった
私には、忘れられない出来事があります。
あるとき、子どもたちを並ばせようとして、「早く並んで!」と声をかけました。
私は、活動を進めたかっただけでした。
特別に怒っていたわけでもありません。
「みんなと一緒に並んでほしい」ただ、それだけでした。
ところが、その子は動けなくなりました。
私はそのとき、
「どうして動かないんだろう?」と思いました。
でも、今なら少し違う見方ができます。
その子にとって、「早く並んで」という言葉は、
私が思っていたほど簡単ではなかったんです。
- どこに並べばいいのか…?
- 誰の後ろなのか…?
- いつまで待つのか…?
- 次に何が始まるのか…?
- 周囲にはどんな音がしているのか…?
たくさんの情報が、一度に押し寄せていたんだと思います。
そして私は、
“動かない子ども” を見ていたけれど、その子が “動けない理由” を見ていなかった。
そのことに、あとから気づきました。
「困った行動」の奥には、「困っている」がある
この出来事をきっかけに、私は子どもの行動を見るとき、
「何をしているか?」だけではなく、
「なぜ、そうしているのか?」を考えるようになりました。
例えば、活動中に歩き回る子。
「落ち着きがない」と見ることもできます。
でも、「何をすればいいのか分からないのかも」と考えることもできます。
急に予定が変わって泣く子。
「こだわりが強い」と見ることもできます。
でも、「見通しがなくなって、不安なのかも」と考えることもできます。
耳をふさいで体育館に入れない子。
「気にしすぎ」と見ることもできます。
でも、「音や反響、照明、人の動きが、その子には強すぎるのかも」と考えることもできます。
新しい運動に挑戦しない子。
「やる気がない」と見ることもできます。
でも、「失敗したらどうしよう、と不安なのかも」と考えることもできます。
同じ子どもの姿でも、
見る側の問いが変わると、見えてくる世界が変わるんです。
「できない」を「まだ安心できていない」に置き換えてみる
もちろん、本当に練習が必要なこともあります。
経験が足りないこともあります。
できるようになるまで時間がかかることもあります。
だから、すべてを発達特性や不安のせいにする という話ではありません。
大切なのは、“できない” という結果だけで、子どもを判断しないこと。
その前に、この子は今、安心してできる状態だろうか? と考えてみることです。
例えば、
- 初めての場所
- 初めて会う人
- 初めてやる運動
- 予定が突然変わった日
- 疲れている夕方
- 音や光などの刺激が多い場所
そんなときに、「できるはずだから、やってみよう」と言われても、
心がついていかない場合があります。
そんなとき、「見ているだけでもいいよ」「先生と一緒にやってみようか」。
「ここまでならできそう?」と伝えてみる。
すると、「やってみても大丈夫かもしれない」
と思えることがあります。
私はそこに、「安心」という大きな力がある と確信しています。
安心は、「甘やかし」ではありません
「そんなに待っていたら、甘やかしにならない?」
そう思う方もいらっしゃるかもしれません。
私も以前は、「できるようにすることが指導」だと思っていました。
でも今は、少し違うように考えています。
安心させることは、何でも子どもの言う通りにすることではありません。
できないことを、ずっとできないままにすることでもありません。
安心できる土台をつくって、その子が一歩を踏み出せるようにすること。
それも、立派な支援だと思っています。
「今日はここまで」でもいい。
「一緒にやってみる」でもいい。
「見ているだけ」でもいい。
その小さな選択肢が、次の「やってみよう」につながるんです。
“正しく導く” から “安心を整える” へ
私はこれまでに30年以上、運動指導の現場で仕事をしています。
そして、「どうすれば上手になるか?」「どうすればできるようになるか?」
をたくさん考えてきました。
もちろん、それは今でも大切です。
でも、子どもたちと関わる中で、
できるようにする前に、安心できる状態をつくること
の大切さを感じるようになりました。
指導とは、正しい方向へ導くことだけではない。
その子が安心して、自分の力を使える環境を整えることでもある。
そう考えるようになりました。
だから今、私が大切にしている言葉があります。
- 正しさより、安心
- 叱るより、待つ
- 導くより、支える
これは「何もしない」という意味ではありません。
むしろ、その子をよく見て、必要な支援を考える
という、積極的な関わりだと思っています。
子どもを変えるのではなく、”関わり方” を少し変えてみる
子どもを変えようとすると、
「どうすれば言うことを聞くか」「どうすればできるようになるか」
という方向に目が向きます。
でも、「関わり方を変えてみよう」と考えると、
見えてくるものが変わります。
「早く並んで」を、「ここに並ぼう」に変える。
「ちゃんとして」を、「まず○○をしよう」に変える。
「今日は違うよ」だけではなく、「今日は○○をして、そのあと△△をするよ」と見通しを伝える。
「やってみなさい」ではなく、「一緒にやってみる?」と選択肢をつくる
「どうして嫌なの?」ではなく、「何がつらいのかな?」と考える
たった一言の違いです。
でも、その一言が、子どもにとっては大きな違いになることがあるんです。
そして、忘れてはいけないこと
ここまで子どもの安心について書いてきました。
でも、もう一つ大切なことがあります。
それは、子どもを支える大人にも安心が必要だということです。
保護者の方も、毎日頑張っています。
「もっと分かってあげたい」「もっと良い関わり方をしたい」。
そう思っているからこそ、
うまくいかなかった日に自分を責めてしまうことがあります。
でも、
- 毎日完璧に対応する必要はありません
- 強く言ってしまう日があってもいい
- 余裕がなくなる日があってもいい
- 誰かに相談してもいい
- 一人では難しいと伝えてもいい
- 支援を受けてもいい
それは弱さではありません。
子どもと一緒に歩いていくために、自分自身も支えてもらう。
それも大切なことだと思います。
「どうして?」が「そうだったんだ」に変わるとき
子どもの行動が変わらなくても、大人の見方が変わることがあります。
- わざとじゃないかもしれない…
- 困っているのかもしれない…
- 見通しが持てないのかもしれない…
- 刺激が強いのかもしれない…
- 安心できていないのかもしれない…
そう考えられるようになる。
すると、「どうして?」という問いが、
「そうだったんだ」という理解に 変わっていきます。
もちろん、それだけですべてが解決するわけではありません。
でも、理解することは、関係を変える最初の一歩 になるんです。
今回(第3期で)、伝えたかったこと
今回、第3期では6回にわたって、
- 「困った行動」
- 「伝わる声かけ」
- 「急な変更」
- 「感覚過敏・感覚探求」
- 「安心と挑戦」
- 「保護者自身の安心」
について考えてきました。
一見すると、それぞれ別のテーマです。
でも、その根っこには、
「子どもが安心して過ごせるには、何が必要なのだろう?」
という一つの問いがあります。
子どもを変えることを急ぐのではなく、まず、
- その子が安心できる場所をつくる
- その子に伝わる方法を探す
- その子が困っていることに気づく
- 必要なら、周囲の大人と一緒に考える
それだけで、子どもの世界は少しずつ変わっていきます。
もし、今「どうして?」と悩んでいるなら
もし今、
「どうして、うちの子はできないんだろう…?」
「どうして、こんなに嫌がるんだろう…?」
「どうして、何度言っても伝わらないんだろう…?」
と悩んでいる方がいらっしゃったら、
すぐに答えを出さなくても大丈夫です。
まずは一度だけ、「この子は、何に困っているのかな?」
と問いかけてみてください。
その問いに、すぐ答えが見つからなくても構いません。
- 一緒に考えてくれる人を探してもいい
- 専門家に相談してもいい
- 保育士や先生、支援者に話してみてもいい
- そして、保護者自身も誰かに話していい
子どもを支えることは、一人で全部背負うことではありません。
おわりに|子どもが安心できる場所を、少しずつ
私は、30年以上子どもたちと関わってきています。
それでも、まだまだ「分からなかった」と気づくことがあります。
だからこそ、これからも子どもたちの姿を見ながら、
「どうして?」と問い続けたいと思っています。
ただし、以前とは少し違います。
「どうしてできないの?」ではなく、「どうして難しいのかな?」
「どうして言うことを聞かないの?」ではなく、「何が伝わりにくいのかな?」
「どうして挑戦しないの?」ではなく、「安心して挑戦できるかな?」
そんな問いを持ちながら、子どもたちと向き合っていきたいと思います。
そして、「どうして?」が、「そうだったんだ」に変わる瞬間を、
少しずつ増やしていきたい。
子どもを変えることより、子どもが安心できる場所をつくること。
その場所が一つ増えるだけでも、
子どもの「やってみよう」は生まれてくるはずです。
- 正しさより、安心
- 叱るより、待つ
- 導くより、支える
この言葉が、子どもと向き合う誰かの心に、
小さなお守りのように残ってくれたらうれしく思います。
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第3期全6回を振り返りながら、子どもの「困った行動」の背景にある不安、見通し、感覚、安心、
そして保護者自身の支えについてまとめています。
この『 よっちゃんブログ 』を通じて、
子どもとの関わり方に悩む保護者の方や、子どもと向き合う指導者の方々と、
学び合い、支え合える場をつくっていけたらうれしいです。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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