~こだわりは、安心を守る方法~
【全6回シリーズ・子どもとの関わり方】第3期 第3回
「どうしてこんなに嫌がるの?」
「少し予定が変わっただけなのに……」
そう思ったことはありませんか?
- 急な予定変更で泣いてしまう
- いつもと違うだけで動けなくなる
- 何度説明しても受け入れられない
保護者としては、
- 「どうして?」
- 「また始まった……」
と戸惑うこともあるでしょう。
私自身、長年子どもたちと関わる中で、そのような場面を何度も見てきました。
しかし実際には、その子たちは 困らせよう としているわけではありません。
むしろ一生懸命に、自分の 安心を守ろう としていることが多いのです。
👉 結論:”急な予定変更” への戸惑いは、その子なりに安心を守ろうとしている姿なんです。
今回は、発達特性のある子どもが急な変更に 不安を感じる 理由と、
安心につながる 関わり方 について書いてみたいと思います。
- “見通し” が安心につながっている
- 大人が思う以上に変化の影響は大きい
- “変更があること” を分かりやすく伝える
- 心の準備ができる時間はとても大切
▶︎ この記事は、30年以上、4歳児から高齢者まで指導してきた現場経験をもとに書いています。
なぜ急な変更が不安になるのか?
発達特性のある子どもの中には、急な変更 に強い 不安 を感じる子がいます。
大人から見ると、
- 「少し予定が変わっただけなのに」
- 「また今度やればいいんじゃない?」
と思うこともあります。
しかし、その子にとっては 予定の変更 ではなく、
安心していた世界が突然変わってしまう出来事 として感じられていることがあるんです。
“見通し” が安心につながっている
👉 結論:発達特性のある子どもの多くは、”次に何が起こるのか” が分かることで安心している。
ある男の子は、毎回の運動教室で
- あいさつ
- 準備運動
- ボール遊び
- リレー
- 片付け
という流れを覚えていました。
活動が始まると、
- 「次はボールだよね?」
- 「そのあとリレーだよね?」
と 確認 しながら参加していました。
一見すると、こだわり が強いようにも見えます。
しかし実際には、
- 「次に何が起こるか分かるから安心できる」
という状態だったのです。

見通しがあることで、不安を減らし、活動に集中する ことができていたんですね。
予想していた流れが崩れると不安になる
👉 結論:安心の土台になっている “見通し” が崩れると、不安が一気に大きくなることがある。
いつもなら最後に行うリレーを、時間の都合で最初に行うことになりました。
担任の先生としては、
「順番が変わるだけだから大丈夫だろう」と思っていました。
ところが一人の子どもは、
「違う!まだリレーじゃない!」と強く訴え、その場から動けなくなってしまいました。
周囲から見ると、
「リレーはやるんだから問題ないんじゃない?」
と思うかもしれません。
しかしその子にとっては、
思い描いていた流れが突然変わった こと自体が、大きな 不安 だったのです。

内容よりも、予想と違う ということが 負担 になっていたんです。
大人が思う以上に変化の影響は大きい
👉 結論:大人にとっては小さな事でも、子どもにとっては大きな出来事として感じられることがある。
その日は、運動会の練習を予定していました。
ところが急に雨が降りだし、体育館での活動に変更になりました。
多くの子どもたちは、
「今日は体育館なんだね」と受け入れていました。
しかし一人の子どもが、
「運動場でやるって言ったのに!」と泣き出してしまいました。
実はその子は前日の夜から、
- 明日は運動場に行く
- かけっこをする
- 友達と並ぶ
という流れを頭の中で何度もイメージしてきました。
そのため場所の変更は、単なる予定変更ではなく、
準備していた計画が全部なくなった ように感じられたのです。

大人にとっては 小さな変化 でも、子どもにとっては
安心 を支えていた 土台が崩れる ほどの出来事になることがあるんです。
発達特性のある子どもが変更に戸惑うのは、わがまま だからではありません。
「こうなるはずだった」という 安心の地図 が突然 書き換わる ことで、
不安や混乱が大きくなってしまうのです。
👉 だからこそ大切なのは、変更をなくすこと ではなく、
変更があることを事前に伝えること なんです。
さまざまな場面でのエピソード
私はこれまで多くの子どもたちと関わってきました。
その中で、急な変更への不安 を強く感じている子どもたちにも出会いました。
周囲からは理由が分かりにくくても、
その子なりの 安心 や 見通し があることを教えてもらった出来事があります。
“いつもの場所” に荷物を置きたかったAくん
運動教室でのことです。
教室に来ると、Aくんは毎回同じ場所に荷物を置いていました。
入口から入って左側の棚の下。
誰に言われたわけでもありません。
自然とそこがAくんの定位置になっていました。
ある日、会場の準備の都合で棚の位置が変わっていました。
するとAくんは教室に入った瞬間に立ち止まりました。
そして困った表情で周囲を見回し、
「荷物を置く場所がない……」と小さな声で言いました。
近くに空いているスペースはたくさんあります。
教室の先生から見れば、
「どこに置いてもいいんだよ」で済む話かもしれません。
しかしAくんは、荷物を持ったまま動けなくなってしまいました。
私は、「今日は棚が移動しているんだね。ここの場所に置いても大丈夫だよ」
と伝えながら一緒に置き、場所を確認しました。
すると少しずつ表情がやわらぎ、活動に参加することができました。

Aくんにとって大切だったのは、荷物を置くことではなく、
いつも通りに始められることが安心 だったんですね。
この出来事を見ていたBくんは
「置く場所なんてどこでもいいじゃん」と言いました。
確かにその通りです。
多くの人にとっては小さな変化です。
しかしAくんの中では、
- 教室に来る
- 荷物を置く
- 着替える
- 活動を始める
という一連の流れができあがっていました。
荷物を置く場所が変わることは、
その流れの最初の部分が 突然変わる ことを意味していたのです。
私たちには見えなくても、
子どもの心の中には 安心 につながる 順序やルール があります。
その安心が 崩れた とき、不安や戸惑い として表れることがあるんです。
だからこそ、
「なぜ困っているのだろう」と 考えてみる ことが大切です。

行動だけを見ると こだわり に見えることでも、
その背景には 安心したい という気持ちが 隠れている ことがあるんです。
「どこでもいい」が難しい子がいます。
それは、わがまま だからではありません。
その子にとっての いつも通り が、
安心して一歩を踏み出すための大切な 支え になっているからです。
👉 私たちが少しだけその 安心を理解 できると、
子どもの表情が ふっとやわらぐ瞬間 に出会えることがあります。
お気に入りのコップが見当たらなかったCさん
朝食の時間。
Cさんがいつも使っているピンクのコップが、食器棚にありませんでした。
お母さんが、
「今日はこっちのコップでいいよ」と青いコップを渡しました。
するとCさんの表情が曇り、
「違う!」と言って泣き始めました。
お母さんは思わず、
「どうして今日はダメなの?」とため息をつきそうになりました。
忙しい朝。
朝食の準備もあり、出発の時間も近づいています。
だからこそ、
コップ一つで泣き出した理由が分からなかったのです。
しかしCさんにとっては、
- 起きる
- 顔を洗う
- 朝ごはんを食べる
- ピンクのコップでオレンジジュースを飲む
という毎朝の流れが 安心 につながっていたのです。

コップが変わったこと以上に、
いつもの朝ではなくなった ことが 不安 だったんですね。
スーパーに行く予定が変更になったDさん
祝日の朝。
Dさんは、前日からお父さんと
「明日はスーパーに行こうね」と話していました。
ところが当日になって雨が強くなり、予定を変更することになりました。
お父さんはDさんに、
「今日は行かないよ。また今度ね」と伝えました。
するとDさんは突然 怒り出し、床に寝転んで泣いてしまいました。
お父さんからすると、
「スーパーにそんなに行きたかったの?」と思ったかもしれません。
しかしDさんの中では、
- スーパーへ行く
- お菓子売り場を見る
- 好きな駄菓子を選んで買う
という一日の予定が、すでに組み立てられていたんです。

楽しみ だった気持ちだけでなく、
頭の中で作っていた 予定表 そのものが崩れてしまったんですね。
いつもの帰り道が変更になったEくん
Eくんの幼稚園からの帰り道の出来事。
いつも通る道が工事中だったため、お母さんは別の道を選びました。
するとEくんは途中で立ち止まり、
「こっちじゃない!」と言い始めました。
お母さんは、
「ちゃんと家に帰れるから大丈夫だよ」と説明します。
それでも 不安 そうな表情は消えません。
Eくんにとって安心だったのは、家に帰ること だけではなく、
いつもの順序で 家に帰ること だったんです。

見慣れた景色 がなくなるだけで、
どこへ向かっているのか 分からなくなった ような気持ちになることがあるんです。
お母さんは最初、
「工事中なんだから仕方ないでしょう」と思いました。
家に帰るための道は他にもあります。
危険なわけでもありません。
だからこそ、「どうしてそんなに嫌がるの?」
と戸惑ってしまったそうです。
しかしEくんの不安そうな表情を見ているうちに、
「この子はわざと困らせているわけではないのかもしれない」
と感じ始めたそうです。
周囲から見れば小さな出来事でも、
毎日 のように 繰り返される と保護者も疲れてしまいます。
- 「また説明しなきゃいけない…」
- 「どうして分かってくれないんだろう…」
そんな気持ちになることもあるんです。
子どもの 不安を理解 したいと思っていても、
毎日の生活の中では 余裕 がなくなることがあります。
👉 保護者の方が、戸惑ったり、イライラしたりする のは、
それだけ 真剣に子どもと向き合っている証 なんです。
お風呂の順番が変わったFさん
Fさんの家庭では、
- 夕ご飯
- お風呂
- 絵本
- 寝る
という流れが 毎日の習慣 になっていました。
ところがある日、
家族で外出して帰りが遅くなったため、
「今日は先にお風呂にしよう」とお父さんが伝えました。
するとFさんが、
「違う!ご飯が先!」と強く言い返したそうです。
保護者には些細な変更かもしれません。
しかしFさんは毎日の流れを手がかりに、安心して過ごしていたんです。

順番が変わる ことは、
心の準備が追いつかなくなる 出来事だったんですね。
お父さんは、
「今日は特別な日だから仕方ないよ」と説明しました。
しかしFさんは納得できません。
何度伝えても受け入れられず、
お父さんも少しずつイライラしてきました。
「どうして今日は柔軟に考えられないんだろう」
そう思ったそうです。
保護者には、帰宅時間や食事の準備など、
考えなければならないことがたくさんあります。
そんな中で 予定変更 を受け入れられない様子を見ると、
つい強い口調になってしまうこともあります。
👉 それだけ毎日一生懸命向き合っているからなんです。
突然の来客に戸惑ったGさん
日曜日の午後。
Gさんは家で好きな遊びをしていました。
そこへ突然、
「おばあちゃんが今から来るよ」という連絡が入りました。
家族は喜んで迎える準備を始めます。
ところがGさんは 不機嫌 になり、自分の部屋へ行ってしまいました。
決しておばあちゃんが 嫌い なわけではありません。
ただ、今日は家で過ごす日 だと思っていたところへ、
予想していなかった出来事が入ってきたため 戸惑った のです。
少し前に伝えられていたら受け入れられたかもしれません。
しかし 突然 だったことで、不安 の方が大きくなってしまったのです。

急な変更 が苦手なのは、変化に弱い からではありません。
安心していた 予定が崩れた ことで、心の準備が追いつかなく なっていたんですね。
お母さんは少し困ってしまいました。
久しぶりに来るおばあちゃんを歓迎してほしい。
でもGさんは部屋にこもってしまいます。
- 「せっかく来てくれるのに……」
- 「失礼だと思われないかな……」
そんな気持ちもあったそうです。
子どもの 不安 だけでなく、周囲への 気遣い との間で揺れることも、
保護者にとっては 大きな負担 になります。
- 「どう説明したらいいんだろう」
- 「私の育て方が悪いと思われないかな」
そんな思いを抱える保護者も少なくありません。
子どもが予定変更に戸惑う姿を見ると、
「そんなことで?」と思うことがあるかもしれません。
でも、その子は 変化そのもの に困っているのではなく、
安心していた見通しが急になくなったこと に 戸惑っている 場合があるんです。

行動の奥にある不安に目(視点)を向けると、子どもの見え方が変わりますよ。
こだわりは困らせるためではない
▶︎ 子どもへの見え方が大きく変わる内容です。ぜひ一度読んでみてください。
急な変更を伝えるときの具体的な工夫
👉 結論:大切なのは、”変更があること” を分かりやすく伝え、
子どもが安心して受け止められるようにサポートすること。
事前に知らせる
👉 急な変更が苦手な子どもにとって、心の準備ができる時間はとても大切です。
- 予定変更が分かった時点で早めに伝える
- 「あと10分で終わるよ」など事前予告をする
- カレンダーや予定表で前日から伝える
- 繰り返し確認しながら見通しを持てるようにする
- “急に” ではなく “予告してから” 変更する

具体的な声かけの例です。
- 「今日は雨だから、公園ではなく体育館で遊ぶよ」
- 「あと1回遊んだら帰る準備をしようね」
- 「いつもと違う予定だけど、一緒に確認してみよう」
変更後の流れを伝える
👉 変更だけを伝えると、不安だけが残ることがあります。
変更後の見通しも一緒に伝えることが大切です。
- 「何が変わるのか」を具体的に伝える
- 「その後どうなるのか」を説明する
- 終わりまでの流れを簡単に伝える
- 次に何をするかを順番で示す
- 不安そうなときは何度でも確認する

具体的な声かけの例です。
- 「今日は公園に行かないけど、その代わり家で工作をするよ」
- 「リレーは最後じゃなくて最初にやるよ。その後はいつも通りだよ」
- 「病院が終わったらおうちに帰ってゆっくりしようね」
選択肢を用意する
👉 自分で選べることがあると、不安がやわらぐことがあります。
- 変更の中でも選べる部分をつくる
- 子ども自身が決められる機会をつくる
- 「どちらが良い?」と選択肢を示す
- 完全な自由ではなく、選びやすい範囲で提案する
- 自分で決めた感覚が安心につながる

具体的な声かけの例です。
- 「公園には行けないけど、お絵描きとブロックならどっちにする?」
- 「先に宿題をする?それともおやつの後にする?」
- 「この席とあの席ならどちらが安心かな?」
視覚的な情報を活用する
👉 言葉だけでは理解しにくい子どももいます。
見て分かる情報を活用すると安心しやすくなります。
- スケジュール表を使う
- 終わった活動を消していく
- 絵カードや写真を見せる
( “公園” のカードを外して “室内遊び” のカードに変える) - ホワイトボードに予定を書く
(今日の予定を紙に書いて見える場所に貼る) - 変更部分を目で見て分かるようにする
(カレンダーに行事や予定変更を書き込む) - カレンダーやタイマーを活用する
(タイマーで “あと5分” を視覚化する)

具体的な声かけの例です。
- 「今日の予定はここに書いてあるよ」
- 「終わったらチェックをつけようね」
- 「次はこの活動だよ」
👉 急な変更への不安を減らすために大切なのは、
”慣れさせること” ではなく “安心して変更を受け入れられる環境を整えること” です。
- 事前に知らせること
- 見通しを伝えること
- 選択肢を用意すること
- 視覚的に分かりやすくすること
そしてその積み重ねが、子どもの安心につながっていきます。
▶︎ 広告:様々な理由から自宅で学習する子どもに対して、安心できる居場所の提供はもちろん、将来の進路選択の際に不登校が不利益になることのないよう、社会的自立や参加を実現するための環境作りに取り組んでいます。

安心が挑戦する力を育てる
▶︎ 実際の現場で何度も感じてきたことを、こちらの記事にまとめています。
おわりに
子どもが変更を受け入れられない姿を見ると、
「またうまくいかなかった」と感じることがあるかもしれません。
でも、その子は頑張っていないわけではありません。
むしろ、不安な気持ち と 一生懸命向き合っている最中 なのです。
だからこそ、
できなかったこと ではなく、
安心できるように頑張っていた 姿にも目を向けてあげてくださいね。
あなたのお子さんや身近な子どもたちは、
どんな場面 で 不安 そうな様子を見せますか?
困った行動 と見える姿の中に、
その子なりの 安心を守る工夫が隠れている かもしれません。
👉 「どうしてこんなことで泣くの?」

そう感じる出来事ほど、実は子どもの不安が隠れている ことがあるんです。
まとめ
- ✔️ “見通し” が安心につながっている。
- ✔️ 大人が思う以上に変化の影響は大きい。
- ✔️ “変更があること” を分かりやすく伝える。
- ✔️ 心の準備ができる時間はとても大切。
この続きは、次の記事でさらに深くお伝えします。
次回(第4回)は、“「気にしすぎ」ではなかった|感覚過敏・感覚探求から見える子どもの世界” 。
「大きな音が苦痛」「タグが痛い」「人混みで疲弊」「光がまぶしい」。
大人とっては “気にしすぎ”。でも、発達特性のある子どもにとっては、
“本当に苦しい” ときがあるんです。現場経験を交えながら書いてみたいと思います。
▶︎ ここまで読んでくださった方には、ぜひ次の記事も読んでいただきたいです。
▶︎ 今回の記事のコラムも、ぜひ、あわせて読んでみてください。
「どうして?」が、「そうだったんだ」に変わるとき、
子どもとの関わり方も、少しずつ変わり始めます。
このシリーズが、その小さなきっかけになれたら嬉しく思います。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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