〜 不安から見える子どものサインを知る 〜
【全6回シリーズ・子どもとの関わり方】第3期 第1回
「どうしてうちの子だけ…」
「何回言っても伝わらない…」
「周りの目がつらい…」
私は指導の現場に立つことで、発達特性のある子どもたちと、たくさん出会ってきました。
- 急に泣き出す
- 大きな声を出す
- 順番が変わると動けなくなる
- 同じことを何度も繰り返す
- 「あとで」が待てない
周囲の大人の方から見ると、
- わがまま
- 困った子
- 親のしつけの問題
と思われてしまうことがあります。
そして保護者の方自身も、
- 「どうして伝わらないんだろう…?」
- 「私の関わり方が悪いのかな…?」
と、自分を責めてしまうことがあります。
でも、長く現場で子どもたちと関わる中で、私はあることを 確信 するようになりました。
それは、
👉 結論:困った行動の多くは、「困らせたいから…」ではなく、
不安を下げたい行動ということです。
今回は、発達特性のある子どもたちの行動を、
👉 問題行動としてではなく 安心を求めるサイン、
として見る視点について、書いてみたいと思います。
- 本当は、子ども自身も困っているんです
- その問題行動には、理由があるんです
- 保護者自身も、理解されないことが一番つらいんです
- “直す” 前に “理解する” ことから始めます
▶︎ 今回の記事はシリーズの一部です。全体の考え方をまとめて読みたい方はこちら👇
▶︎ 人は、何歳になっても学び直せます。
私は30年以上現場で指導していますが、子どもに対する見方を間違えていた時期がありました。
『わざとやっているように見える』行動の裏側
👉 結論:「困らせたい…」のではなく、不安を処理できない状態なんです。
急に泣く・怒る・動けなくなる理由
子どもたちの行動には、
いつも ことばにならない声 が隠れています。
泣く・怒る・動かない・笑う・走り出す——。
そのどれもが、「困らせよう」としているのではなく、
伝えようとしていることばの代わり なんです。

まずはその「ことばにならない声」を、聞き逃さないでください。
子ども自身も「どうしたらいいか分からない…」ことがある
ある日のこと。
スーパーで買い物をしようと店内を歩いていたとき、
私の前を歩いていた親子が急に立ち止まりました。
手をつないでいた男の子が、突然座り込んでしまったのです。
保護者の方は、その子に向かって
- ちゃんと歩いて!
- 恥ずかしいから、やめて!
- わがまま言わない!
と、強く促していますが動きません。
そのとき、ふと気づいたのです。
その男の子は 動かない のではなく、「どうしたらいいか分からない…」なんだ、と。
周囲の視線が集まる中、
保護者の方は、その後も何とか立たせようとしていました。
でも、焦れば焦るほど、男の子は動けなくなっています。
その姿を見ながら、私は

男の子だけじゃない。
保護者の方も、今すごくつらいんだと感じました。
『困らせたい…』のではなく『困っている!』
スーパーは刺激が非常に多い場所です。
- 明るい照明
- 人混み、人の話し声
- BGM、店内アナウンス、カートの音
- におい(惣菜、魚、香水など)
- 商品の色や情報量(チラシ、貼り紙など)
感覚過敏のある子 にとっては、
これらが一気に押し寄せてきて、脳が処理しきれない状態 になっていたんです。
座り込んだのは、
- これ以上動けない
- 情報を遮断したい
- 身体を止めて耐えている
という 防御反応 に近い場合があります。

子ども自身も「困らせたいから…」と行動したのではなく、
「どうしたらいいか分からない」状態になっている、ことがあるんです。
発達特性のある子どもは “不安” を強く感じやすい
👉 結論:だれでも、先の見通しが立たないと不安になる。
「先が分からない」が大きなストレス
たとえば大人の私たちでも、
- 初めての場所
- 先が見えない状況
だと、不安になりますよね?
発達特性のある子どもは、
- どこへ行くのか?
- 何をするのか?
- いつ終わるのか?

これらが、あいまいだと、
その不安の感じ方が、とても強くなることがあるんです。
急な変更や予想外がつらくなる理由
子どもは、
- 納得できない
- 急に終われない
このような状況になると、
身体が止まり、座り込む形で表現することがあります。
- お家から → スーパー
- おもちゃ売り場から → 食品売り場
- 欲しいのに → 買ってもらえない
などの切り替えに、強い負荷を感じることがあるんです。

あなたも子どもの頃に、一度は経験していませんか?
強い口調や焦らせる声かけが与える影響
先ほどの保護者のように、
- 「ちゃんと歩いて」
- 「恥ずかしい」
- 「わがまま言わない」
- 「なんで急に?」
と強く促すと、さらに子どもの負荷が上がって、
- パニック
- 泣く
- 寝転ぶ
- 暴れる
などの行動へ発展することがあります。
ここで重要になってくる視点は、
子どもの表現方法だけを見ると 問題行動に見えます が、でも、
👉 その奥には、「助けて!」が隠れているんです。
『同じことを繰り返す』のにも意味がある
👉 結論:繰り返しは、安心を確認する作業になっていることがある。
同じ動き・同じ順番・同じ言葉は予測可能です。

予測できることは、不安を下げます。
👉 つまり、”いつも通り” が安心につながっているんですね。
同じセリフを繰り返すAくん
👉 こだわりは “安心を保つ方法” ということがある。
たとえばAくんは、一度にいくつもの指示を与えられたとき、
理解や記憶の整理のために同じ質問をしてしまうことがあります。
周りからは、
- こだわり
- 変なクセ
- 無意味な反復
に見えても、

本人の中では、重要な役割を果たしているんです。
毎回必ず、同じ場所に触れてから体育館に入るBさん
現場で出会った “順番が変わると不安になる子”。
最初は、「何かのこだわりがあるんだ」
と思っていました。
👉 でも、その流れを崩されると、急に不安定になることがありました。

Bさんにとっての “いつも通り” が、
安心するための大切な準備だったんですね。
一番つらいのは『理解されないこと』
👉 結論:できない自分ではなく、
分かってもらえない自分につらくなっていくことがある。
「こんにちは」が言えないCさん
👉 「なんでできないの?」と言われ続けるつらさ。
Cさんが家ではお話しできることを、保護者の方は知っています。
でも外では、
- 緊張で声が出ない
- 話し出すタイミングが分からない
- 相手の目を見るだけで精一杯
ということがあるんです。
すると周囲は、
- 「挨拶くらいできるでしょ…」
- 「親が教えてない…」
- 「無視された…」
と受け取ることがあります。
子どもは…、「言いたいのに、口から出ない」
保護者も…、「何年間も、毎日毎日練習してきたのに」

それでも、しつけ不足とみられてしまうんです。
朝の支度で靴下だけ履けないDさん
👉 子どもは “分かってもらえない不安” を抱えている。
小学1年生のDさんは、服は上手に着替えられるのに
靴下を履くところで毎朝止まってしまいます。
理由を聞くと、
- 「タグが足に刺さる」
- 「縫い目が気持ち悪い」
- 「左右が少し違う感じがする」
と言うそうです。
大人から見ると普通の靴下でも、
当人には、とても強い違和感があるみたい…。
結果として、
- 登校前に泣く
- 靴下を何度も脱ぎ直す
- 「学校に行きたくない」につながる
ことがあるようです。
毎朝のことなので保護者の方も、
「早くして!」と言いたくなってしまうそうです。
👉 でも、当人のDさんは、どうにか履こうと頑張っているんです。

Dさんにとっては、履きたくないのではなく、
痛くて耐えられない感覚に近かったんですね。
▶︎ もし今、同じように悩んでいるなら、こちらの記事もきっと参考になります。
スーパーで突然座り込むEくん
Eくんは、学校ですでに頑張りすぎてしまって、
保護者と一緒にスーパーに来た時点で、余力が残っていなかったんです。
発達特性のある子は、
外見上は普通に見えても、日常でかなりの 認知的エネルギー を使っています。

さらに重要なのは、
“言葉で説明できない負荷がある” 場合が多いことなんです。
👉 本人もなぜ無理なのかを説明できず、
結果として座り込むという形でしか表現できないときがあるんです。
美容院に入る直前になると泣き出す5歳のFくん
美容院そのものではなく、
髪を切られているときに、つらい表情をするFくん。
では、なぜ髪を切られるときがつらいのかは、

子どもによってそれぞれ苦手ポイントが違うようです。
たとえば、
- ハサミの「シャキシャキ音」が怖い
- 髪が首に落ちる感覚が耐えられない
- バリカンの振動が痛い
- クロス(ケープ)の締めつけが苦しい
- 耳の近くを触られるのが怖い
などがあります。
当人はその事をうまく説明できずに、
- 「ヤダ!」
- 「怖い!」
- 「痛い!」
の、一言になってしまうことが多いようです。
周囲からは、
「髪を切るだけなのに」と言われることがあります。
👉 でも当人にとっては、怖さや不快感が重なり、
身体が拒否反応を起こしているときがあるんです。
Fくんに質問すると、髪を切られる事よりも、

「耳の近くで聞こえるハサミの “シャキシャキ音” が怖かった」
と答えてくれました。
運動会の練習が始まる頃になると、朝から不安定になるGさん
運動会の当日です。
みんなが音楽に合わせて動き始める中、
Gさんは、ただ立ち尽くしていました。
保護者席から見ていたお母さんは、
- 「頑張れ…」
- 「少しでも動けたら…」
と、祈るような気持ちで見守っていたそうです。
でも周囲からは、
- 「やる気がないのかな…?」
- 「練習してないんじゃない…?」
- 「もしかしてふざけてる…?」
という空気を、保護者席で感じることがあったと話してくれました。
Gさんにとって運動会(練習も含めて)は、
- 大きな音
- 人の多さ
- 周囲の動き
- 次に何をするのか分からない不安
- 失敗してはいけない緊張
などで、頭の中がいっぱいになっていたんです。
👉 身体はそこにいても、心は耐えることに必死だった。

でも、そのつらさが周囲には気づかれないことがあります。
運動会のあとお母さんは、
「どうしてできなかったの?」
ではなく、
「今日は疲れたね」と声をかけたそうです。
本当は、お母さん自身も、
周囲の視線に胸が苦しくなっていたと思います。
- 「みんなはできているのに」
- 「うちの子だけ…」
そんな思いが頭をよぎることもあったと思います。

それでも、子どもが一番つらかったことを、
お母さんは分かっていたんですね。
👉 周囲には、立っているだけに見えても、
当人にとっては、崩れないよう必死に耐えていることがあるんです。
偏食が強いHさん
👉 保護者もまた、孤独の中で頑張っている。
たとえば、親戚が集まる食事の席で、
Hさんが一口も食べられず、お母さんが何度も頭を下げていました。
「すみません…」と言いながら、
本当は、一番つらいのはお母さん自身だったと思います。
家では、
- 食べられる物を探して
- 少しでも栄養が取れるように工夫して
- 毎日悩みながら向き合っている
それでも、
- 甘やかし
- 好き嫌い
と言われてしまう。
👉 理解されないつらさは、子どもだけでなく、保護者の心も少しずつ削っていくんです。
「できない」の裏には、

本人なりの限界や理由があると理解されるだけでも、
子どもも保護者もかなり救われます。
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“直す” 前に、”安心” をつくる
👉 結論:子どもは安心すると挑戦できる。
安心すると、子どもは少しずつ動き始める
発達特性のある子どもたちの行動の多くは、
安心を求める行動 でもあります。
- 急に泣き出す
- 大きな声を出す
- 順番が変わると動けなくなる
- 同じことを何度も繰り返す
👉 子どもは、理解されたと感じられたときに、少しずつ動き始めます。
▶︎ 関連する内容として、こちらがおすすめです。
“甘やかし” と “安心” は違う
困った行動 の奥にあるものを知ることは、子どもを 甘やかすこと ではありません。
👉 安心を与えることは、なんでも許すではなく、
安心した状態なら力を出せるという前提を整えることです。
理解することが、支援の第一歩になる
発達特性のある子どもと保護者が傷つきやすいのは、
「困っていること」そのものではなく、
- 努力不足と思われる
- 怠けていると思われる
- 愛情不足と思われる
- 普通ならできる 前提でみられる
ことなんです。
おわりに
私は30年以上、運動指導の現場で、たくさんの子どもたちと出会ってきました。
その中で 確信している事 があります。
👉 子どもは、「理解された」と感じられたときに、
少しずつ安心し、少しずつ動き始める、ということです。
もちろん、毎日うまくいくわけではありません。
保護者の方も、疲れる日が当然あります。余裕を失う日もあります。
でも、困った行動の奥にあるものを知ろうとすることは、
👉 子どもを甘やかすことではなく、
その子が安心して生きていくための、大切な土台になります。
もし、あなたが今
- どうして伝わらないんだろう
- 私の関わり方が悪いのかな
と悩んでいるなら、
👉 まず知ってほしいのは、
子どもも、そして保護者も、毎日を一生懸命に頑張っている。
ということです。
👉 うまくいかない日があったとしても、
理解しようとする関わりは、決して無駄にはなりません。
疲れた夜に読み返す、お守りのページ
- ✔︎ 本当は、子ども自身も困っている
- ✔︎ 問題行動には、必ず理由がある
- ✔︎ 保護者自身も、理解されないことが一番つらい
- ✔︎ “直す” 前に “理解する” ことから始める

スクリーンショットをして、保存したくなるチェックリストですね。
👉 今日だけではなく、また苦しくなった日に読みに来てください。
子育ては、一度読んだから終わりではありません。
苦しい日は何度でもやってきます。
そんな日にこの記事が、あなたの心を少しでも休ませる場所になれたら、
これ以上うれしいことはありません。
この続きは、次の記事でさらに深くお伝えします。
次回(第2回)は、“あいまいな指示が苦しい子どもたち” 。
「ちゃんとして」「あとでね」「みんなと同じにして」そんな “あいまいな言葉” が、なぜ苦しくなってしまうのか。発達特性のある子どもたちの “分かりにくさ” について、現場経験を交えながら書いてみたいと思います。
▶︎ ここまで読んでくださった方には、ぜひ次の記事も読んでいただきたいです。
▶︎ 今回の記事のコラムも、ぜひ、あわせて読んでみてください。
「どうして?」が、「そうだったんだ」に変わるとき、
子どもとの関わり方も、少しずつ変わり始めます。
このシリーズが、その小さなきっかけになれたらうれしく思います。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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