“並ぶ” が難しい子の本当の理由

生きづらさ

〜 ワーキングメモリの視点から 〜


運動指導の現場で、よく見かける場面があります。

  • 列から出てしまう
  • 前の子との間が詰まったり離れたりする
  • 途中で別の方向を向く
  • 何度声をかけても整列が続かない

そのとき私たちはつい、
「ちゃんと並んで」「前を見て」「もう何回言えば分かるの」と、声をかけてしまいます。

しかし、この “並ぶ” という行動は、実は子どもにとってかなり複雑な 認知活動” です。
そしてそこに深く関わっているのが “ワーキングメモリ” なんです。

6〜9分

子どもは並んでいる間、同時に多くの情報を処理しています。

例えば、

  • 自分の立つ位置
  • 前の子との距離
  • 後ろの子の存在
  • 先生の指示
  • 周囲の音や動き
  • 次に何が始まるのか

つまり並ぶことは、“「立つ」だけではなく、複数の情報を同時に保持し続ける作業” なのです。

よっちゃん
よっちゃん

これはまさに、“ワーキングメモリの働き” です。


ワーキングメモリの容量には個人差があります。
容量が小さい場合、並ぶ場面では次のようなことが起こりやすくなります。

前の子との距離を覚え続けられない

少し時間が経つと “どれくらい離れていたか” が、頭の中から消えてしまいます。

すると、

  • 近づきすぎる
  • 離れすぎる

という状態になります。


指示を保持出来ない

先生が、「前にならえ」と言ったとします。
しかし数秒後には、“その言葉の記憶が消える” ことがあります。

すると、

  • 腕を下ろす
  • 横を見る
  • 動き出す

ということが起きます。


待っている間に目的を忘れる

並ぶ時間が長いほど “何のために並んでいるのか” が、ワーキングメモリから消えてしまいます。
その結果、

  • 列を離れる
  • しゃべり出す
  • 別の遊びを始める

という行動が出ます。


“並べない子” では無く “情報を保持し続けるのが難しい子”

ここで大切なのは、“態度の問題として見ないこと” です。
その子は、並びたくないのでは無く、“並び続けるための情報を保持できない” 可能性があります。


位置を見えるようにする

ワーキングメモリは、外に出すと楽になります
例えば、

  • 足形マーク
  • カラーテープ
  • フープ

“ここに立つ” が見えると、覚え続ける必要が無くなります。


並ぶ時間を短くする

並ぶ時間が長いほど、ワーキングメモリは消耗します。
可能なら、

  • 説明を短くする
  • すぐ動く
  • 小グループにする

と効果があります。


距離を身体で覚えさせる

言葉よりも体感です。

例えば、「手を伸ばして前の子の肩に届かないくらい」。
身体感覚にすると、記憶の負担が減ります。


並び方を一度 “体験”させる

説明よりも “一度やってみる”。これだけで理解が大きく変わります。


子どもが列から出た時。
それは、

  • ルールが守れない
  • 落ち着きがない

のでは無く、
もしかすると、“頭の中の作業机がいっぱい” なのかもしれません。

そして、こう考えると指導の言葉が少し変わります。
「ちゃんと並んで」では無く、「ここに立つと分かりやすいね」。

並ぶことは単純な行動のように見えて、実は “認知の力と環境の支えで成り立っている行動” です。

よっちゃん
よっちゃん

子どもが並べない時、それは “出来ない子” なのでは無く、私たちがまだ支え方を見つけていないだけなのかもしれません。


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