〜 ワーキングメモリと時間の見通し 〜
あなたの現場でも、こんなシーンがよくあると思います。
順番を待っている子どもが、
- 列から出てしまう
- 前の子を追い越す
- 別のことを始める
- 「まだ?」と何度も聞く
その様子を見ると、
「もう少し待てないの?」「順番でしょう」と声をかけたくなります。
けれども、子どもにとって “待つ” という行動は、実はとても難しい活動です。
そしてその背景には、“ワーキングメモリ” と “時間の見通し” が関係していることがあります。
“待つ” 時、子どもの頭の中で起きていること
子どもが順番を待つ時、頭の中では次のようなことが同時に起きています。
- 自分の順番を覚えておく
- 今どこまで進んでいるかを見る
- 何のために待っているかを覚えておく
- まだ動かないように自分を抑える
つまり “待つ” という行動は、“情報を保持しながら、行動をコントロールする” という作業です。
ここで働いているのが、“ワーキングメモリ” です。
ワーキングメモリが小さいと起きること
ワーキングメモリの容量が小さい場合、待つ場面では次のようなことが起きやすくなります。
“何を待っているか” が消える?
少し時間が経つと、”順番を待っている” という目的が、頭の中から消えてしまいます。
すると、
- 列を離れる
- 別のことを始める
という行動が起きます。
自分の順番を覚えていられない?
待つという行動には、
- 自分は何番目か?
- どこまで進んだか?
という情報を保持する必要があります。
これが難しいと、
- 追い越してしまう
- 途中で前に出る
ということが起きます。
時間の長さを感じにくい?
子どもはそもそも、“時間の見通し” を持つことが得意ではありません。
さらにワーキングメモリの負担が大きいと、”あとどれくらい待つのか” が分からなくなります。
すると不安が生まれ、
- 「まだ?」
- 「いつ?」
という言葉や行動になります。
“待てない子” では無く “見通しが持ちにくい子”

ここで大切なのは、行動をそのまま評価しないことです。
その子は、待とうとしていないのではなく、“待つための情報を保持し続けることが難しい” のかもしれません。
運動指導で出来る工夫
順番が見えるようにする!
ワーキングメモリは、外に出すと楽になります。
例えば、
- 番号マーカー
- 並び順カード
- コーンで位置を区切る
待つ人数を減らす!
待つ人数が多いほど、見通しは難しくなります。
- 小グループに分ける
- 同時に複数スタートにする
と効果があります。
“あとどれくらい” を見せる!
時間が見えないと不安が強くなります。
例えば、
- 「あと2人」
- 「あと1回」
- 「次があなた」

この一言だけで落ち着く子は多いです。
待つ時間を短くする!
子どもにとって、長く待つこと自体が大きな負担です。
可能であれば、
- 回転を早くする
- 説明を短くする
- 同時活動を増やす
と効果があります。
指導者の見え方が変わる時
子どもが待てない時、それは、
- 我慢が足りない
- 落ち着きがない
のではなく、
もしかすると、“時間の見通しが持てず、頭の中の情報が消えてしまっただけ” なのかもしれません。
「待ちなさい」と言う代わりに、「あと二人で順番だよ」と伝える。
その小さな違いが、子どもにとっての分かりやすさになります。
子どもが待てない時、それは “出来ない子” なのではなく、“私たちがまだ見通しを渡せていないだけ” なのかもしれません。


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