『 なぜ子どもの動きは “ぎこちなく“ 見えるのか? 』
〜 見え方がかなり変わる (4)〜
「どうして、この子はこんなに動きが “ぎこちない“ んだろう?」
走っていても、どこか身体が不安定。
ボールを投げようとしても、腕と身体の動きがうまくつながらない。
ジャンプすると、着地で大きくバランスを崩してしまう。
縄跳びでは、縄を回すタイミングと跳ぶタイミングが合わない。
そんな子どもの姿を見て、
- 運動神経が悪いのかな…?
- 身体の使い方が苦手なのかな…?
- もっと練習すればできるようになるのかな…?

と考えたことはありませんか?
もちろん、運動経験が少ないことや、練習量が関係する場合もあります。

けれど、もしその “ぎこちなさ” の背景に、
身体のいくつもの動きを一緒に使うことの難しさがあったとしたら…。
私たちが「もっと頑張って」と声をかけるだけでは、
なかなか動きが変わらないことがあるのも不思議なことではありません。
👉 こうした身体の動きには、『協調運動』という力が関係しています。
そして、発達の過程で協調運動の獲得が難しく、
日常生活や遊び、運動などに影響する状態として、『DCD(発達性協調運動症)』があります。
ただし、『動きがぎこちない=DCD』ではありません。
子どもの運動の苦手さには、発達の特徴だけでなく、
- 経験
- 環境
- 感覚の違い
など、さまざまな要因が関係しています。
👉 だからこそ大切なのは、子どもを診断することではなく、
「なぜ、この子は動きにくそうなんだろう?」と、その背景を考えてみること。
この記事では、子どものぎこちない動きを、単なる運動音痴や不器用という言葉だけで終わらせず、
協調運動とDCDという視点から、その背景と運動指導の工夫について考えていきます。
▶︎ 人は、何歳になっても学び直せます。
私は30年以上現場で指導していますが、子どもに対する見方を間違えていた時期がありました。
“ぎこちない動き” は、ただの運動音痴?

まず知っていただきたいのは、 次のことです。
動きがぎこちない=運動神経が悪い、ではない
私たちが何気なく行っている動作も、実はたくさんの身体の働きが組み合わさっています。
たとえば “ボールを投げる” という動作。
- ボールを見る
- 身体の向きを調整する
- 足を踏み出す
- 体重を移動する
- 肩を動かす
- 肘を伸ばす
- 手首を使う
そして、適切なタイミングでボールを離す。
これらが一つの流れとしてつながることで、私たちは自然にボールを投げています。
一つひとつの動作はできても、”動作と動作をつなげること” が難しい
👉 ところがこのように、
“身体のいくつもの動きを一緒に使うこと” が難しい子どもがいます。

ただ、腕だけを動かせばいいわけではないんです。
そこに、協調運動の難しさがあります。
協調運動とは

少し難しく聞こえる『協調運動』という言葉ですが、
簡単に言うと、次のようになります。
身体のさまざまな部分を、目的に合わせて一緒に動かすこと
たとえば、
- 走りながらボールを追いかける
- ボールを見ながら手を伸ばす
- 跳びながら縄を回す
- 階段を交互に上る
- 自転車のペダルをこぎながらハンドルを操作する
- 音楽に合わせて身体を動かす
👉 こうした動きには、身体の複数の部分をタイミングよく協力させる必要があります。

大人からすると簡単に見える動作でも、
子どもの身体の中では、たくさんの情報を処理しているんですね。
身体を動かすつながりをつくること
- 次は足を出す
- 今、腕を動かす
- ボールが近づいてきた
- ここで手を伸ばす
- 着地するから身体を支える
こうした情報を受け取りながら、身体を動かしています。

だから、「もっと上手にやって」と言われても、それだけでは動きが改善しません。
👉 それは、本人の “やる気の問題” ではなく、どう身体を動かせばいいのか、
そのつながりをつくることに時間がかかっているからなんです。
DCDにはどのような特徴がある?

次に、知っていただきたい言葉があります。
『DCD (Developmental Coordination Disorder:発達性協調運動症)』です。
ボールを捕る・投げることが難しい
👉 DCDは、年齢に応じて期待される運動技能の獲得や遂行が難しく、
そのために日常生活や学習、遊びなどに影響が出ることがある発達上の状態です。
たとえば、
- ボールを捕る・投げることが難しい
- はさみや箸などの操作が難しい
- 着替えや靴ひもなどに時間がかかる
- 走る、跳ぶ、登るなどの動作がぎこちない
- 動作の順番を組み立てることが難しい
- 新しい運動技能を身につけるのに時間がかかる
といった姿が見られることがあります。

ただし大切なのは、一つや二つの “苦手な動き” があるからといって、
DCDだと判断できるわけではない、ということです。
動きを身につけることに何か難しさがある
子どもの運動の苦手さには、
- 身体の発達
- 経験
- 環境
- 感覚の違い
- 注意の向け方
など、さまざまな要因が関係しています。
DCDについても、診断は専門家によって総合的に行われるものです。
ですから、大人 (指導者・保護者) に求められるのは、
「この子はDCDかもしれない」と決めつけることではありません。

むしろ、この子には、動きを身につけることに何か難しさがあるのかもしれない、
と気づくこと。その視点が、とても大切なんです。
“何度やってもできない” のではなく “覚え方が違う” のかも
練習方法が適切か考えてみる

運動指導では、「何回もやれば、身体が覚える」という考え方があります。
確かに、繰り返すことで身につく動きはたくさんあります。
でも、同じ練習を繰り返しても、なかなか動きが変わらない子どももいます。
👉 そんなとき、「もっと練習しよう」だけではなく、
「今の練習方法は、この子に合っているんだろうか?」と考えてみることが大切です。
動きを小さく分けて伝える
たとえば、ボール投げ。
「もっと強く投げて」と言われても、
身体のどこを、どの順番で動かせばいいのか分からない子がいるかもしれません。
その場合には、
- 「足を一歩前に出してみよう」
- 「身体を横に向けてみよう」
- 「腕を後ろに引いてみよう」

などと、一つの動きを小さく分けて伝えてください。
👉 あるいは、”投げること” ではなく、まず大きなボールを転がすことから始める。
- 成功しやすい距離にする
- ゆっくりしたボールを使う
- 大人 (指導者・保護者) が見本を見せる

こうした工夫によって、“身体の動きをつなげる” 経験を増やします。
“できる形” に変えると、動きが変わることがある

私が運動指導をしていて、とても大切だと感じることがあります。
それは…、
👉 子どもを練習に合わせるのではなく、練習を子どもに合わせてみるということ。
道具や距離を変える
たとえば、ボールを投げることが難しい子の場合、

通常サイズのボールを使う必要はありません。
- 大きなボールに変えてみる
- ボールを転がすところから始める
- 距離を短くする
- ボールをゆっくり投げる
- 成功する回数を増やす
すると、「できない!」だった活動が、「これならできる!」に変わります。
👉 これは、単に難易度を下げているだけではありません。
“身体をこうやって動かすと、うまくいく” という経験を積んでいるんです。
“ぎこちなさ” を責めない

もう一つ、忘れてはいけないことがあります。
それは “子どもの心” です。
- 動きがぎこちない
- 失敗する
- 周りの子はできている
- 大人から何度も注意される
- 友達から笑われる
👉 そんな経験が重なると…、
「どうせ自分はできない」という気持ちが生まれてしまうことがあります。
すると、
- 身体はますます固くなります
- 失敗しないように慎重になりすぎる
- 周囲の視線が気になる
- 次の動きを考えすぎる
本来なら自然に動けるはずの身体が、うまく動かなくなることがあります。
成功しやすい環境をつくる

だから私は、”できないから、もっと練習させる” ではなく、
「できる経験を増やすには、何を変えればいいだろう?」と考えることが大切
だと思っています。
大人が見るべきことは
「できた! できない」だけではない
子どもの運動を見るとき、
- 「できた!」
- 「できなかった…」

だけで評価してしまうと、見えなくなるものがあります。
たとえば、
- 昨日より少し身体が安定した
- ボールを見る時間が長くなった
- 一歩だけ前に出られた
- 転んでも、もう一度やってみた
- 大人の動きをまねするようになった

こうした変化も、その子にとっては大切な「できた!」なんです。
『結果』だけではない
👉 特に、協調運動に難しさがある子どもにとっては、小さな成功を積み重ねながら、
身体の動きを覚えていく時間そのものが成長なのだと思います。

だからこそ大人 (指導者・保護者) には、
“結果を見る目” だけではなく、”途中の変化を見る目” が必要なんです。
“ぎこちない子” ではなく “動きを学んでいる途中の子”
子どもの動きを見て、
- ぎこちない
- 不器用
- 運動が苦手
と感じることはあると思います。
でも、その言葉だけで子どもを決めつけてしまうと、その子の中で起きていることを見失います。
もしかすると、その子は今、
- 自分の身体がどこにあるのかを感じ
- どのタイミングで動けばいいのかを学び
- 身体のいくつもの部分をどうつなげればいいのか
を経験している途中なのかもしれません。

そう考えると「どうしてできないの?」という問いが、
「どうしたら、この子は動きやすくなるだろう?」という問いに変わります。

この違いは、とても大きいと思いますよ。
おわりに
子どもの動きがぎこちないとき、私たちはつい、
- 「もっと練習すればできる…」
- 「もう少し頑張ればできる…」
と考えてしまいます。けれど、その子にとっては、
- 身体の動きをつなげること
- タイミングを合わせること
- 自分の身体を思い通りに動かすこと

その一つひとつに、ある程度の時間が必要なのです。
👉 だからこそ、「どうしてできないの?」ではなく…、
「どうしたら、この子は動きやすくなるだろう?」と考えてみること。
- ボールを大きくする
- 距離を短くする
- 動きを小さく分ける
- 見本を見せる

そして、「できた!」という経験を少しずつ増やしていく。
そうしているうちに、ある日、「この子、急に上手になったね」そんな瞬間が訪れます。
でも、その「急に!」の前には、
誰にも気づかれなかった小さな変化が、きっと積み重なっています。
- 昨日より少し身体が安定した
- 一歩だけ前に出られた
- ボールを見ることができた
- もう一度やってみようと思えた

その一つひとつが、その子にとっての大切な成長です。
👉 だから私は、”ぎこちない子” ではなく、”今、自分の身体と動き方を学んでいる子”
として、その姿を見ていきたいと思っています。

そして、子どもが変わるのを待つだけではなく、
その子が力を発揮できる環境を、私たち大人が先につくること。
👉 それが、指導者や保護者にできる大切な支援の一つなんです。

“ぎこちない” は、”できない証拠” ではありません。
その子が、自分の身体と動き方を見つけている途中の姿、なんです。
この続きは、次の記事でさらに深くお伝えします。
次回は、
“ブランコが怖い・回り続ける子の理由。発達特性と「感覚処理」” をわかりやすくお話しします。
ブランコを怖がる子…。何度何度も回り続ける子…。
子どもの行動には、感覚の受け取り方が関係しているかもしれません。
ここを知ることで、あなたの指導の見え方もかなり深くなります。
😊 最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
▶︎ ここまで読んでくださった方には、ぜひ次の記事も読んでいただきたいです。
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